2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J11319
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠藤 良輔 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | クロロフィル蛍光 / 顕微画像計測 / 光合成 / 除草剤 / 微小藻類 / Φ_<PSII> |
Research Abstract |
クロロフィル蛍光は、光合成生物から発せられる自家蛍光の一種で、様々な光条件下でのクロロフィル蛍光値から、光合成活性の解析に有用な蛍光パラメータを算出することができる。クロロフィル蛍光画像計測は、各画素ごとに蛍光パラメータを算出した蛍光パラメータ画像を用いて、光合成活性の分布について評価する手法である。本研究では、このクロロフィル蛍光画像計測に顕微鏡を導入し、藻類を対象としたクロロフィル蛍光顕微画像計測を試みた。 まず、Sprogyra distentaを対象として、生育ステージの違いが、除草剤による光合成障害に及ぼす影響について検討した。解析には、2種類のクロロフィル蛍光画像から算出した蛍光パラメータ画像(Φ_<PSII>)を用いた。Φ_<PSII>は、光化学系IIから光化学系Iへといたる電子伝達の収率と強い相関を持つとされるパラメータである。湖沼への流出が指摘されているDCMU系除草剤を、成熟したSprogyra distentaと若いSprogyra distentaにそれぞれ同一の濃度で与えたところ、若いSprogyra distentaのΦPSIIに大きな低下が確認された。藻類の繁殖と成長には、一般に季節的な周期性が見られる。そのため、この結果は、湖沼に流出した除草剤の危険性が、季節によって変動することを示唆している。現在、上記内容の論文を投稿中である。 次に、合焦法を用いたクロロフィル蛍光顕微画像計測システムの構築を試みた顕微鏡は、一般に焦点距離が短く、対象の凹凸が激しいと、全体に焦点の合った画像を取得することが困難になる。一方、蛍光パラメータ画像は、上記のように2種類のクロロフィル蛍光画像から算出する画像であるため、各画素にそれぞれ焦点が合っていることが必須の条件である。このジレンマを解決するため、全ての画素に焦点があっている合焦画像を取得し、従来の計測手法に導入した。合焦画像算出にあたっては、顕微鏡のステージを正確なピッチで移動させて、高さの異なるクロロフィル蛍光画像(焦点面画像)を複数枚撮像した。この焦点面画像間で、画素ごとに合焦の度合を比較し、合焦画像を算出した。この合焦画像は、2次元情報に加えて高さ情報をも含むため、対象の3次元構造の把握も可能である。現在、この合焦画像を用いた手法の確立と、本システムを用いたクロロフィル蛍光画像解析を行っている。
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