2004 Fiscal Year Annual Research Report
シカの採食がもたらす環境改変の連鎖とそれが生態系に及ぼす影響
Project/Area Number |
03J11350
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高田 まゆら 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ニホンジカ / 植物群落 / ecosystem engineering / 植食者 |
Research Abstract |
本研究は、ニホンジカの採食が生態系に果たす役割の重要性を、おもに1次的環境改変効果と2次的環境改変効果の2つの観点から明らかにすることを目的とした。千葉県房総半島の草地群落では、シカによる採食を受けた草地に、非常に高密度でゴウダイコハナバチが生息している。本種は土中に営巣し、土を掘り起こすため、2次的な環境改変作用を有している可能性が高い。本研究では、こうした2つの環境改変効果が土壌動物や植物群落に与える影響を、観察と野外実験から明らかにしている。 今年度は、シカの採食とコハナバチの営巣場所の関係、そしてコハナバチの2次的改変効果の評価を目的として、以下の野外実験を行った。調査地である東京大学千葉演習林内の草地群落に設置したシカ除去区において、1×1m^2のプロットを12個設けた。それらのプロットに、1)植物の刈り取り、2)植物の刈り取りとコハナバチの除去、3)対照区という3種類の処理を行った。コハナバチが活動する4月から7月の間、それぞれのプロットにおいて、植物群落構造、土壌動物群集を調べた。 処理1)と3)の植物群落構造とコハナバチの営巣密度の比較を行ったところ、1)のほうが植物枯死部の被度は低く、裸地の被度は高く、植物の被度は低く、そしてコハナバチの営巣数も多いという昨年度までに行った野外観察、野外実験と同様の結果が得られた。またこれらの傾向は、コハナバチが活動する4月〜7月まで一貫して観察された。このことから調査地の草地群落では、シカの採食が及んだ場所においてコハナバチが高密度で営巣することが明らかになった。また5月以降、調査地におけるコハナバチの密度が激減してしまい、処理1)と2)の比較が不可能となり、コハナバチの2次的改変効果を評価することができなかった。 昨年と今年の調査によって得られた新たな知見については、現在、国内誌への投稿を準備中である。
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