2003 Fiscal Year Annual Research Report
小脳運動学習の小脳皮質LTD非依存的な新規学習メカニズムの解明-海馬の関与-
Project/Area Number |
03J11377
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高月 香菜子 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 瞬目反射条件付け / 海馬 / 小脳 / 長期抑圧(LTD) / マウス / シータ波 |
Research Abstract |
小脳運動学習の1つである瞬目反射条件付けは、音刺激と瞼への侵害刺激の組み合わせを繰り返し提示することにより、音を聞くだけで瞼を閉じるようになる連合学習である。これまでこの学習のメカニズムは小脳皮質長期抑圧(LTD)を中心として説明されてきたが、小脳LTDを必要としない新たなメカニズムの存在も明らかとなっている。本研究の目的は、この新規学習メカニズムについて解明することである。研究計画に挙げた具体的な目的のうち、本年度は「小脳LTD非依存的学習に対して海馬がどのように関わっているのか、その機能的関連を電気生理学的実験により明らかにする」ことを目的として研究を行った。まずマウスにおいて瞬目巨射条件付けの学習中に海馬ニューロンの集団的同期活動であるシータ波を記録することに成功し、記録したデータの解析法を確立した。データ解析法については、脳波解析において主に用いられるパワースペクトル解析に加え、ゼロ交差法による特定の周波数帯の出現頻度解析を行った。野生型マウスと小脳LTDが欠損しているマウス(GluRδ2欠損マウス)において無刺激時の海馬シータ波を比較すると、GluRδ2欠損マウスは野生型マウスに比べシータ波レベルが低い傾向が見られた。さらに学習中の海馬シータ波を比較すると、野生型マウス、GluRδ2欠損マウスともに条件付けに伴い海馬シータ波type2(4-8Hz)レベルが減少する個体が多かった。学習中のtype2レベルと学習率の関連を個体別に調べると、GluRδ2欠損マウスにおいては条件付けに伴いtype2レベルがよく減少する個体は学習率が高く、逆にtype2レベルが不変もしくは増加する個体は学習率が悪かった。このことはGluRδ2欠損マウスにおいては海馬の活動と学習率が対応していることを示している。これに対し、野生型マウスではtype2レベルと学習率の対応は見られなかった。
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