2003 Fiscal Year Annual Research Report
NMRを用いた膜蛋白質-蛋白質相互作用における結合部位決定法の確立とその応用
Project/Area Number |
03J11378
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹内 恒 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | Nuclear Magnetic Resonance / K^+チャネル / ポアーブロッカー / 転移交差飽和(TCS)法 |
Research Abstract |
ポアーブロッカーと呼ばれる一群のペプチドは、K^+チャネルのポアードメインに細胞外から結合することでそのイオン透過活性を物理的に阻害する。電位依存性K^+チャネルはサブクラスによってポアーブロッカーに対する感受性が大きく異なることが知られているが、感受性を左右する要因は明らかでない。このような状況において、電位依存性K^+チャネルとポアーブロッカー間の相互作用を立体構造に基づいて解析し、両者の結合において鍵となる残基を特定できれば、電位依存性K^+チャネルのポアーブロッカー感受性を明らかにする重要な情報を与えると期待される。 そこで本研究では、電位依存性K^+チャネルと高い相同性を示し、かつポアーブロッカー感受性であるStreptomyces lividans由来のK^+チャネル:KcsAとポアーブロッカー:Agitoxin2(AgTx)の相互作用をNMR法により解析した。AgTx上のKcsA結合界面は、転移交差飽和(TCS)法を用いることにより同定した。TCS法は、従来のNMR法と異なり、蛋白質複合体の分子量に依存せず結合部位を決定できることから、膜蛋白質の解析における分子量的問題を克服することが可能である。TCS実験により影響を受けた残基はAgTx上において一つの連続した面を形成し、それらの残基に対する変異導入は、KcsAに対する結合活性を低下させた。よって、同定された結合界面が結合親和性に寄与していることが示された。TCS実験結果に基づいてKcsA-AgTx複合体モデルを構築し、複合体モデル中における相互作用残基対の特定を行った結果、ポアーブロッカーの分子表面に保存された構造モチーフを見出し、それに対応するチャネル上の相互作用残基を特定した。チャネル上で特定された相互作用残基は、ポアーブロッカーに対する感受性の有無により異なる保存性を示しことから、ここで明らかとなった相互作用は、電位依存性K^+チャネルのポアーブロッカー感受性を決定する要因と考えられた。
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[Publications] Takeuchi, K., Yokogawa, M., Matsuda, T., Sugai, M., et al.: "Structural basis of the KcsA K+ channel and Agitoxin 2 pore-blocking toxin interaction by using the transferred cross-saturation method."Structure. 11. 1381-1392 (2003)