2003 Fiscal Year Annual Research Report
ナトリウム利尿ペプチドファミリーの分子と機能の相関
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03J11406
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川越 暁 東京大学, 海洋研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | ナトリウム利尿ペプチド / 円口類 / メクラウナギ / ヤツメウナギ / hfNP / CNP |
Research Abstract |
海という高浸透圧環境に適応するために、脊椎動物は進化の過程で血液中のイオン濃度や浸透圧を海水よりも低く抑えるメカニズムを獲得してきた。原始的な脊稚動物である軟骨魚類では、血液中のイオン濃度は海水の2分の1に調節し、浸透圧は血液沖に尿素を蓄積させることで海水にあわせている。一方、硬骨魚類や四肢動物では血液中のイオン濃度と浸透圧をともに海水の約3分の1に保っている。ナトリウム利尿ペプチド(NP)は、血液の水や電解質バランスに関与するホルモンファミリーであり、海へ適応する際の血液の浸透圧調節にも重要な役割を果たしている。硬骨魚類や四肢動物にはANP,BNP,VNP及びCNPが同定され軟骨魚類にはCNPしか存在しない。このことから、NPファミリーの祖先分子はCNPであり、血液中のイオン濃度と浸透圧の調節機構とともにその分子種を多様化させていったと考えられてきた。最も原始的な脊椎動物の内口類のメクラウナギ類は、血液中のイオン濃度及び浸透圧は海水とほぼ等張である。しかし、円口類でもNPの存在が免疫組織化学的手法により示唆されていた。そこで、メクラウナギ類から4種(Myxine glutinos a, Paramyxine atami, Eptatretus cihhratus, Eptatrerus burgeri)、また現存するもうひとつの円口類のグループであるヤツメウナギから3種(Geotria australis, Petromyzon marinus, Lampetra japonica)を選び、PCR法によるNPのcDNAクローニングをおこなった。その結果、ヤツメウナギ類には軟骨魚類と同様にCNPが存在したが、メクラウナギ類にはCNPは存在せず、その代わり全てのNPの特徴を兼ね備えた新規NP (hagfish NP, hfNP)を同定した。しかし、前駆体構造を解析すると、hfNPはCNPの特徴的なプロセシング部位が存在した。またhfNP前駆体は分子系統解折からもCNPに最も類似することがわかった。これらの結果からNPの祖先分子はCNPであることを更に強く示唆することができた。 今後は、メクラウナギにhfNPを投与して、hfNPがどのような作用を示すのかを追っていくことを計画している。血液の浸透圧を調節していないメクラウナギにおけるNPの作用を調べることで、NPが本来もっていた機能を明らかにしたいと考えている。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Kawakoshi A., Hyodo S., YasudaA., Takei Y.: "A single and novel natriuretic peptide is expressed in the heart and brain of the most primitive vertebrate, the hagfish (Eptatretus burgeri)"Journal of Molecular Endocrinology. 31. 209-220 (2003)
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[Publications] Kawakoshi A., Hyodo S., lnoue K., Kobayashi Y., Takei Y: "Four natriuretic peptides (ANP, BNP, VNP and CNP) coexist in the sturgeon : identification of BNP in fish lineage"Journal of Molecular Endocrinology. 32. 547-555 (2004)
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[Publications] 川越 暁, 兵藤 晋, 井上 広滋, 竹内 祥郎: "ナトリウム利尿ペプチドファミリーの分子進化"科学と生物. Vol.42 No.4. 273-279 (2004)