2003 Fiscal Year Annual Research Report
霊長類の体毛色多様性に関与する分子遺伝学的機構の解明
Project/Area Number |
03J11415
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中山 一大 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 霊長類 / 体色多様性 / 遺伝子 / 進化 / 適応 |
Research Abstract |
マカクでは、力ニクイザル種群、トクザル種群に含まれる種の毛には明確なアグチ様パターンが存在し、全体的な体毛色が明灰争から暗褐色であるのに対して、シシオザル種群ではアグチ様パターンは明確でなく、体毛色は総じて黒い。このようなマカクにおける体毛色の多様性とMC1Rの多様性との関連性を探るべく、マカク3種群18種について哺乳類の主要な色素形成関連遺伝子であMC1RとASIPの塩基配列を決定した。この2遺伝子のコード領域上にはシシオザル種群における黒い体毛色と強く関連する変異は発見されなかった。しかし、ASIPの分子進化学的な解析により、トクザル種群、カニクイザル種群では非同義置換率が同義置換率より低く保たれているのに対して、シシオザル種群でのみ非同義置換率が同義置換率を凌駕していることが明らかになった。前2種群ではアグチ様パターンが普遍的であるのに対して、シシオザル種群ではアグチ様パターンが稀でみる。アグチ的な体毛色は捕食者からの隠蔽効果を有すると考えられており、シシオザル種群のサルのように捕食者が存在しない環境に生息している揚合はアグチ的な体毛色を保持する必要性が薄れることが予測される。そのため、シシオザル種群で明瞭なアグチ様パターンが喪失したことによって、ASIPに作用してきた機能的制約が緩和したためと考えられる。 in vitroにおけるcAMPアッセイの結果、テナガザルMCIRは恒常的活性型に進化した可能性が示された。また、PCR、サザンブロッティング解析の結果、テナガザルではASIPがゲノム上から消失していることが明らかになった。これらの結果は、テナガザルの体毛色の祖先型は黒単色であったことを示唆するものである。
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