2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J11436
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
工藤 英樹 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 低温傷害 / 光合成 / 光阻害 / 光化学系I / キュウリ / ATPase |
Research Abstract |
キュウリなどの低温感受性植物は、0-10℃の低温下で低温障害とよばれる不可逆的な生育障害を受ける。一方、シロイヌナズナなどの低温耐性植物は低温障害を受けない。2002年の工藤および園池の研究から、低温障害の不可逆性の原因は光化学系I(以下系I)の阻害にあることが解明された。本研究では系Iの阻害をクロロフィル蛍光でモニターし、シロイヌナズナから低温感受性を示す変異株を選抜することにより、低温感受性メカニズムの解明を目指した。シロイヌナズナのT-DNA挿入変異株に4℃で5時間の低温弱光処理を施した後、生育環境下で1日回復させ、野生型と異なる蛍光挙動を示す変異株を蛍光カメラによりスクリーニングした。野生型シロイヌナズナの蛍光挙動は当該処理の24時間後には処理前と同様に回復するが、キュウリのそれは回復しない。この差に注目し、約20000個体のスクリーニングを行ったが、残念ながら野生型と蛍光挙動の異なる変異株は1つも確認できなかった。 そこで、低温感受性、つまり低温障害の不可逆阻害部位である系Iの阻害をもたらす要因を生理・生化学的側面から再検討するため、低温弱光下で脱共役することが報告されているチラコイド膜上のH^+-ATPaseに着目した。これまで、低温弱光で生じるH^+-ATPaseの脱共役は可逆的であるため、不可逆的である低温障害の原因にはならないと考えられてきた。しかし、H^+チャネルブロッカーであるDCCDを減圧浸潤法でキュウリ葉に与えると、低温弱光処理による系Iの阻害が対照に比べ軽減された。また、脱共役剤であるSF6847を同様に与えた場合には、低温だけでなく、常温弱光下でも系Iの阻害がみられた。これらの結果は、H^+-ATPaseの脱共役が低温障害の要因になりうることを示唆する。今後は、このH^+ATPaseの脱共役と系Iの阻害の関係を詳細に解析していく予定である。
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