2003 Fiscal Year Annual Research Report
下廃水処理プロセスにおけるバクテリオファージに関する基礎研究およびその応用
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03J11439
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
李 相賢 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | バクテリオファージ / 生物学的リン除去 / PAO / 活性汚泥 / ファージの宿主特異性 / 溶菌性ファージ / Microlunatus phosphovorus / Siphoviridae |
Research Abstract |
1年次(平15.4.-平16.3.)では生物学的リン除去活性汚泥からバクテリオファージを分離し、その特性を分析した。 まず、生物学的リン除去活性汚泥から細菌の分離を試みて16株の細菌を分離(E1-E16)した後、これらを宿主菌として同じ活性汚泥からのバクテリオファージの分離を試みた。そして総合40個のバクテリオファージサンプルが分離されそれぞれの宿主菌だけを溶菌する宿主特異性をみせた。一方、単離したバクテリオファージのうち14種は宿主溶菌能を途中で失ってしまい、非溶菌性のファージの存在が示唆された。他の26種は感染から溶菌までの潜伏期(latent period)は約9時間し、宿主菌一個体あたり生産される個体数(burst size)は約6-48個であった。 この結果は活性汚泥内でこれらのバクテリオファージが宿主菌を活発に溶菌させる可能性のある事を示唆した。 次は培養可能な典型的なリン蓄積・除去細菌(PAO:Phosphate Accumulating Organism)として分離されているMicrolunatus phosphovorus JCM9379株を選んで、これを宿主とする13種のバクテリオファージサンプルが得られた。それらをさらに精製した結果として、2種類のM.phosphovorus溶菌性バクテリオファージ(φMP1、φMP2)を分離できた。これらの宿主特異性は、M.phosphovorusに系統分類学上で隣接している23個の菌株を含む総数70菌株に対する溶菌性実験で確認された。これらφMP1とφMP2は形態学的・生理活性的特徴などの分析から、Siphoviridaeグループのウイルスに分類された。両者とも形態学的特徴としてヘドとテイルを持ち、ヘドは正多面体でテイルは伸縮性はあるが収縮性はなかった。また、これらの生理的特徴は、それぞれ、ゲノムは2本鎖DNAで大きさは約45±3kbと24±4kbで、潜伏期は18±0.2と32±0.3時間、burst sizeは163±8と322±13であった。 PAO達の一員であるM.phosphovorus株に特異的な溶菌性バクテリオファージが存在することが示され、リン除去活性汚泥内ではバクテリオファージがリン除去細菌群集の大きさを直接的減少させる事によって活性汚泥のリン除去能の変化に影響を与えられるとの可能性が考えられた。
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