2004 Fiscal Year Annual Research Report
マウス初期胚における遺伝子発現開始のメカニズムについて
Project/Area Number |
03J11443
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
原 賢太郎 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | サイクリンA2 / サイクリンディペンデントカイネース2 / 胚性遺伝子の発現 / マウス1細胞期胚 / レチノブラストーマプロテインのリン酸化 / diced siRNA |
Research Abstract |
減数分裂の過程で成熟した卵子は、受精を経て全能性を持つ1細胞期胚になる。この間、遺伝子発現は減数分裂の過程で停止し、受精後もしばらくの間停止状態が保たれる。マウスにおいては1細胞期胚のS期になって初めて胚性遺伝子の転写が開始される事が知られている。本研究では、胚性遺伝子の発現開始機構にcyclin A2が関与している事を明らかにした。Cyclin A2の核内局在量は、1細胞期胚の間に急激に増加していた。その増加は、受精後のpoly(A) tailの伸長を阻害した場合、受精後の蛋白質合成を阻害した場合共に抑制されたことから、cyclin A2は母性mRNAのpoly(A) tailの伸長がきっかけとなって受精後に新しく合成され、核内に蓄積してくることが明らかとなった。このcyclin A2を標的にしたsiRNAを未受精卵に導入した場合に、1細胞期胚の転写活性が減少した。Cyclin A2と結合するcdk2の活性を、阻害剤を用いて抑制した場合にも1細胞期胚の転写活性が減少した。Cyclin A2/cdk2蛋白質を導入した1細胞期胚では、その転写活性は増加した。これらの結果は、cyclin A2がcdk2と結合し、胚性遺伝子の発現を抑制していることを示唆している。Cyclin A2/cdk2の基質であるretinoblastoma protein(pRb)のリン酸化部位を、特異的に認識する抗体を用いて免疫染色を行った結果、マウス1細胞期胚において、pRbのThr356は、cyclin A2/cdk2によってリン酸化されていることが明らかとなった。以上の結果から、受精後にcyclin A2が合成され、cdk2活性を制御することによってpRbをリン酸化し、pRb結合蛋白質の解離を促す事によって、クロマチン構造の変化を誘導することが予測され、その結果、胚性遺伝子の発現が開始されることが示唆された。
|
Research Products
(1 results)