2003 Fiscal Year Annual Research Report
植物ウイルスの病原性を制御する新たな遺伝子発現機構
Project/Area Number |
03J11455
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平田 久笑 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ウイルス / サイレント変異 / ステムループ構造 |
Research Abstract |
植物ウイルスは限られた塩基配列上に遺伝子情報をコンパクトに納め、転写あるいは翻訳レベルにおける様々なストラテジーを組み合わせて遺伝子の発現を制御している。遺伝子の発現機構を解明することは、ウイルス学における知見の寄与のみならず、植物ウイルスの感染機構の詳細、さらには植物ウイルス耐性機構の開発に関わる基盤的知見も得られることから、病害防除に基づく作物生産のためにも重要な研究課題である。本研究では、ひとつのORFに機能が異なる複数の遺伝子の保存モチーフを含むというユニークなゲノム構造を有するカピロウイルス属に着目しゲノムにコードされる遺伝子の機能および発現様式を解析し、さらに病原性の発現と制御に関わる機携を解明することを目的としている。 まずウイルスゲノムの網羅的な解析を目的として、DNA修復系欠損大腸菌変異株を用いたウイルスゲノムcDNAへのランダム変異導入法を新規に確立した。またその成果のひとつとして、ゲノムの4646番目の1塩基置換によるサイレント変異によって、野生株に比べて極度に病原性が低下するというというこれまでに例のない現象を確認した。この変異部位は複製酵素遺伝子と外被タンパク質遺伝子のそれぞれの保存モチーフの間にあるが、感染組織内におけるウイルス蓄積量を詳細に比較した結果、1塩基置換によってウイルスRNAの複製効率が低下することを確認した。次いで、変異部位の周辺配列を調べた結果、変異塩基を含む強固なステムループ構造が予測されること、さらに1塩基置換によってこのステムループ構造が変化することを見出した。以上の成果を、論文としてまとめ発表した。また現在、ステムループ構造がウイルスの複製酵素の活性や発現などに関与してウイルスの病原性を制御するという作業仮説のもとに、その検証実験に取り組んでいる。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Hirata, H., Lu, X., Yamaji, Y., Kagiwada, S., Ugaki, M., Namba, S.: "A single silent substitution in the Apple stem grooving virus genome causes symptom attenuation."Journal of General Virology. 84. 2579-2583 (2003)