2003 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子操作技術を利用した視覚情報処理機構の解明 〜分子から行動まで〜
Project/Area Number |
03J11484
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長谷川 淳 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 網膜 / シナプス / グルタミン酸トランスポーター |
Research Abstract |
精神活動の正確な解明のためには、複雑な神経回路の動作機序を、シナプス単位で一つ二つ記述していくことが必須となる。 本研究によって、グルタミン酸トランスポーター(EAAT)という蛋白質分子の、シナプス伝達特性に対する制御の様式が徐々に明らかになってきた。 EAATは近年、様々な中枢神経系の部位においてシナプス伝達特性を調節しうる蛋白質であることが報告されてきている。しかしながら、脳の一部を切り出した標本を使用しているため、生体内での実際の機能に関する示唆はほとんど得られていなかった。また、EAATには5種類のサブタイプが存在するが、分子生物学的手法以外にこれらを完全に区別する手段はなく、具体的な機能差はほとんど不明であった。 本研究では網膜標本に対して光刺激を与え、生体内におけるシナプス伝達の状態を再現した。このとき、EAATのサブタイプの1つであるGLAST1が、遅い時間周波数(<4Hz)の光情報に選択的に関与していることを、GLAST1遺伝子欠損マウスを利用することで明らかにした。 さらに、網膜の最初のシナプス(視細胞から双極細胞へのシナプス)伝達に関して、電気刺激を用いた詳細な解析を行ったところ、緩電位によるアナログ的なシナプス伝達の強度特性と時間特性とが干渉しないように、EAATがシナプス伝達の時間経過を一定に揃える役割を担っていることが示された。ここで興味深いことに、この働きにおいてGLAST1はほとんど関与しておらず、EAAC1という別のタイプが強く関与していることが、EAAC1遺伝子欠損マウスを利用することで確かめられた。 これらのことから、EAATは光情報の時間特性に関して、サブタイプ特異的に、しかもシナプス部位特異的に異なる役割を持ち、生体内で機能しているということが新たに明らかになった。
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Research Products
(1 results)