2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J11491
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
巽 由樹子 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 歴史学 / ロシア / メディア / 出版 / 検閲 / 中間層 |
Research Abstract |
本年は、研究会・学会での発表を中心に研究を進めた。 第一に、2003年5月17日に、東京大学スラヴ文学科での19世紀ロシア文化研究会で報告を行った。これは、1865年検閲改革における政策担当者の意図と、改革によって新しく生じた商業的出版活動の実態の食い違いを示し、65年検閲改革の限界を示すことによって、従来評価が定まっていないこの改革の再考を試みたものである。この研究会はロシア文学研究者と合同で行われるものであるため、文学研究の立場からの指摘・助言を数多く得ることができた。 第二に、2003年10月26日に、ロシア史研究会大会において報告を行った。これは、検閲緩和や経済動向によって活発化した商業的出版活動が、「大改革期」と称される1860-70年代において、既存のインテリゲンツィヤによる言論活動を凌駕する規模で新たなメディアネットワークを普及させたことと、そのような商業的出版活動のメディアにおける言説コードがどのような特色を持ったかということを論じたものである。これらを明らかにすることによって、従来のロシア史研究が革命に関連するものを何よりも注視したために看過されがちであった商業的なメディアと、その担い手である中間層に着目することが、19世紀後半ロシア社会の新たな一側面を描出しうることを主張した。ロシア史研究会大会は、全国のロシア史研究者が年に一回集まる場であり、第一線の研究者との有意義な議論が可能になった。 上記ロシア史研究会大会での報告内容をもとに論文を執筆し、現在投稿中である。 これらの研究を進めるにあたって、北海道大学総合図書館及びスラヴ研究センターにおいて、8月と2月の二度にわたり、史料調査を行った。 この他に今年度は、「史学雑誌」誌上に、R.J.ゴールドスティーン『政治的検閲』日本語訳版(2003年6月刊)についての新刊紹介原稿を書く機会を得た。
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