2003 Fiscal Year Annual Research Report
ウズベキスタンにおける慣習経済の分析と貧困問題への適用に関する研究
Project/Area Number |
03J11537
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
樋渡 雅人 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 開発経済学 / 貧困 / プライベート・トランスファー / ウズベキスタン / 旧ソ連 / CIS / 計量経済学 / 社会人類学 |
Research Abstract |
1.2003年8,9月にウズベキスタンにおいて調査を行った。アンディジャン州アルティンクル地区の約500世帯のマハッラ(伝統的共同体)において、ランダム抽出による約250世帯の家計調査を実施した。調査では、タシケントの世界経済外交大学のOB8名がインタビュアーとして参加し、共和国マハッラ慈善基金の許可、及び、調査地のマハッラ委員会の協力を得た。この調査によって、生活水準のデータのみならず、同国の慣習的な組織であるギャプ(Gap)とカッサ(Kassa)に関する詳細なデータを得ることができた。調査地のマハッラでは、81.6%の家計が、これらの組織に平均して2.5個参加していることが確認された。ギャプとカッサは、回転型貯蓄信用講の機能や、共同体的拘束を強化する機能を果たしていると考えられる。データの入力・整理は終了し、現在、データの分析を行なっている。 2.ウズベキスタンのプライベート・トランスファー(私的資源移転)の計量分析を、1995年の約1500世帯の家計調査データを用いて行なった。目的は、市場移行後の最も経済的に困難であった時期に、家計間の私的な互酬的経済活動が、インフォーマルな社会保障として機能していたことを実証することである。本研究の成果は、2003年7月に『アジア経済』(アジア経済研究所)に投稿した後、すでに2度のリバイスを経て、現在、第三稿を提出中である。分析結果からは、親族間移転と、隣人間移転において、恒常所得の再分配が確認された。 3.プライベート・トランスファーの利他主義モデルに関する理論的検討を行った。これまで、プライベート・トランスファーに用いられる財の多様性について関心があまり払われてこなかったが、複数財を想定することによって、利他主義仮説の統計的テストの結果が異なったものになることを指摘した。本研究の成果は、2003年度日本経済学会秋季大会において発表した後、現在改稿中である。
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Research Products
(1 results)