2003 Fiscal Year Annual Research Report
海洋深層における乱流拡散率の全球的な時空間分布の解明
Project/Area Number |
03J11636
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡辺 路生 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 海洋深層 / 乱流拡散 |
Research Abstract |
長期の気候変動をコントロールしている深層海洋大循環のパターンや強さは中深層における小規模スケールの乱流拡散過程に大きく依存する:このため深層海洋大循環の正確な経蕗や強さを決定するにはこの乱流拡散の大きさをマッピングすることが不可欠である. 本研究ではHenyey et al.(1986)で提唱された"Eikonal Approach"の手法を用い、現実的な外力スケールおよび乱流拡散スケールの間でのエネルギーカスケード過程を3次元的に再現できるモデルを構築した.また,このモデルを用いて多数回のケーススタディを実行し,その結果に基づき流速シアの強さによる乱流拡散の変化を計算した. その結果,エネルギー散逸には,内部波スペクトル空間のうち,高鉛直波数かつ高周波数成分の内部波の砕波が主に寄与していることがわかった.このときGarrett-Munkの内部波モデルを仮定すると,エネルギー散逸率は深層海洋大循環を維持するのに必要な値よりも小さいという観測と矛盾しない結果が得られた.また,流速シアの強さを変えるケーススタディの結果から,内部波の砕波は高鉛直波数の近慣性流シアがコントロールしていることが明らかになった.つまり,現実の深層海洋大循環を再現するには,高鉛直波数の近慣性流のエネルギーが何らかの機構によって外力スケールから供給されることでエネルギー散逸が強くなっている海域の存在が示唆された.さらに,エネルギー散逸率が現実の深層海洋大循環を再現するにはGarrett-Munkの内部波スベクトルモデルの20倍程度のエネルギーが高周波数の近慣性流に必要である,という定量的な結果がはじめて得られた. 上記の結果を日本海洋学会秋季大会で発表した.
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