2004 Fiscal Year Annual Research Report
両親媒性分子によって構成される機能膜に関する分子論的研究
Project/Area Number |
03J11651
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菊川 豪太 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 両親媒性分子 / 分子動力学法 / マルチスケール解析 / 界面安定性 / 界面微視構造 / 自由エネルギー |
Research Abstract |
本研究では,生体膜を構成する両親媒性分子を対象に,ミクロスケールの動力学(例えば分子動力学法)からの情報を抽出し,よりマクロスケールでの動力学(ブラウン動力学,DPD法など),あるいは生体膜の連続体モデルに還元することによって,生体膜のマルチスケールモデル,シミュレーション手法を構築することを目指し,研究を行っている.今年度では,両親媒性分子や液体内に存在する電解質が気液界面の挙動についてどのような影響を与えるかについて,分子動力学レベルでの解析を行った.特に電解質(例えばNaCl)の分子モデルの違い,例えば,量子力学的な分極効果を取り入れるが否かによって,界面の電気二重層の構造が大きく変化することを明らかにした.しかし,定量的に比較しうる物理量の実験的測定結果と古典的モデルによるシミュレーション結果はよい一致を示すことがわかった.したがって,計算効率という観点からもスケールアップには,古典的モデルを採用することとした.このミクロのモデルをよりマクロスケールに取り入れる手法として,自由エネルギーを用いた古典的密度汎関数法の有効性を検討した.この手法では,分子レベルの相互作用を用いて,近似的にではあるが,直接,系の自由エネルギーが評価でき,これによって系の挙動が把握できる.これまでの粒子をラグランジュ的に捉える方法に対して,場をオイラー的に捉えることができるため,スケールアップと計算量の低減を両立できる.現在対象としている系では,各分子の急激な数密度分布の振動などが存在しないため,平均場近似を用いて自由エネルギーを評価することが有効であることがわかった.
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