2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J11687
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡本 佳比古 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 熱電変換材料 / 遷移金属酸化物 / 二次元電子系 |
Research Abstract |
層状遷移金属酸化物Sr_<0.5-X>RhO_2、無水物Na_<0.3>CoO_2を中心に研究を行った。これらは、新しい熱電材料として注目されているγ-Na_xCoO_2の関連物質である。 昨年度、Sr_<0.5-x>RhO_2において、絶縁体であるSr_<0.5>RhO_2がSr欠陥の導入により金属相に転移すること、その金属相(x=0.11)が、非常に大きな熱電特性を持つことを見出していた。本年度、この金属相の高い熱電特性の起源を明らかにするため、磁化、比熱を測定した結果、バンド絶縁体にキャリアドープして現れた金属相としては異常に大きな準粒子有効質量をもっていることを見出した。高い熱電特性発現において、大きな有効質量は非常に重要な働きをしていると考えられる。また、このSr_<0.5-x>RhO_2は、γ-Na_xCoO_2と同じ結晶構造、同じ電子配置をもつが、金属相しか得られないγ-Na_xCoO_2と異なり、バンド絶縁体から金属まで幅広い組成をとることができるため、Na_xCoO_2の高い熱電特性の機構解明にも役割を果たせる可能性がある。 また、超伝導を示す水和物Na_<0.3>CoO_2・1.3H_2Oの脱水物である、無水物Na_<0.3>CoO_2の物性を明らかにした。超伝導体Na_<0.3>CoO_2・1.3H_2Oにおいて、Co3d電子は遍歴し、金属的な物性を担っているが、このCo3d電子は300℃で脱水することで局在し、32Kで反強磁性相に相転移する。この局在化の起源を明らかにするため、TEM観察を行ったところ、Naイオンが超周期で配列していることを見出した。結晶水によりNaイオンのポテンシャルが遮蔽される水和物と異なり、無水物Na_<0.3>CoO_2においては、Co3d電子が直接Naイオンの周期的ポテンシャルの影響を受ける結果、電荷分離し、局在しているものと考えられる。この結果は、この系の電子物性において、Naイオンが非常に重要な役割を果たしていることを示唆するものである。これらの成果について、国内学会で1件、国際会議で3件発表した。
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