2003 Fiscal Year Annual Research Report
流れをもつプラズマの安定性と揺らぎ-非エルミート系のスペクトルと繰り込み理論
Project/Area Number |
03J11704
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
廣田 真 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | プラズマ / 波動・安定性 / スペクトル理論 / 非エルミート / 代数的不安定性 |
Research Abstract |
本研究は、流れをもつプラズマの波動や安定性を理論的に解析するために、揺らぎのスペクトルと漸近挙動を厳密に解析することを目的としている。具体的には、流れをもった平衡のまわりでプラズマの方程式を線形化して解くことになるが、それは非エルミート作用素のスペクトル理論を必要とする難しい間題であり、数学的にも一般的な解法は存在しない。 そこでまず、本研究さは簡単のため1次元(平板形状)の理想プラズマの平衡を考え、シア(勾配)をもった磁場や流れの中での揺らぎの挙動を解析した。プラズマ中では磁場に沿った方向に伝播するAlfven波がよく知られているが、磁場がシアをもつ場合、位相速度(Alfven速度)が空間的に変化するため、揺らぎの挙動には連続スペクトルが現れる。Alfven波は横波なので磁場に垂直な二つの偏波があり、またそれぞれが正負の伝播方向をもつため、合計で4づの連続スペクトルが存在する。さらに、シアをもった流れが存在するとそれらは複雑なドップラーシフトを受ける。 理想プラズマにおける磁場や流れ、圧力の揺らぎの場はしばしば変位ベクトル場に帰着され、線形化方程式はエルミートとなることが知られているが、そこでは時刻ゼロで磁場と圧力の揺らぎが無いという特別な条件が課された揺らぎにしか着目していない。本研究では任意の初期条件から出発した解をラプラス変換で解いたところ、上記の4つの連続スペクトルが縮退し、非エルミート系に特有の共鳴が起きていることがわかった。その結果、揺らぎの振幅は時間に比例して増大し、従来の指数関数的な挙動とは異なる新しい不安定性が存在することがわかった。このように初期値問題の解が求まったことは非エルミート作用素のスペクトルを理解するうえで、数学的にも重要である。
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Research Products
(1 results)