2003 Fiscal Year Annual Research Report
顕著な抗腫瘍活性を有する化合物エクテナサイジン743の効率的全合成研究
Project/Area Number |
03J11720
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阿部 昌尚 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 海洋由来天然物 / 抗癌剤 / 全合成 / 抗腫瘍活性 / 希少性 |
Research Abstract |
エクチナサイジン743(Et 743)は、カリブ海原産のホヤ(Ecteinascidia turbinate)より単離された、強力な抗腫瘍活性アルカロイドである。現在、これまでに無い作用機序を持つ有望な海洋由来抗癌剤として注目を集め、欧米諸国において行われている臨床試験は最終段階へと進んでいる。我々の研究室においては、2002年の全合成達成以来、Et743のグラム単位での供給を目標とし、合成経路の改良研究を進めてきた。 本年度は、左右のアミノ酸誘導体セグメントの大量供給可能な効率的合成ルートの開発を行った。左セグメントに関しては中間体となるスチレン誘導体へめ効率的変換の検討を行った。3-メチルカテコールを出発物とし、Kolbe-Schmitt反応により6位にカルボキシル基を導入、エステル化後、数段階を経て5位を選択的に臭素化した。続いてメチレンジオキシ基を導入後、1-メチルピペラジン存在下DIBALを用いて還元を行うとエステルを選択的にアルデヒドへと変換することに成功した。最後に、臭素から水酸基への変換を行った後、ベンジルエーテルして保護し、目的とするスチレンの等価体と考えられるアルデヒドの大量合成に成功した。このアルデヒドはスチレンとした後、Sharpless法を用いた不斉ジオール化を経て、数段階で左セグメントへと変換可能である。 本方法は、以前の方法で問題となっていた芳香環部分の酸化還元を行っていないという点で、より大量合成に適用可能な合成であると考えられる。一方、右セグメントに関しては、デヒドロアミノ酸の前駆体となるアルデヒドへの、効率的変換について検討を行った。 さらに本年度において、以前の全合成経路(Ugi反応、Heck反応を経る)によらない、新規なビシクロ[3.3.1]骨格の構築法についても検討を行った。
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