2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J11747
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阿部 穣里 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 相対論 / 4成分相対論的分子理論 / CASPT2法 / 量子化学 / 多参照摂動論 |
Research Abstract |
相対論的分子理論の重要性は現在では広く認識され、重原子を含む分子系ではその考察は必須となっている。相対論的量子化学の大本である4成分Dirac方程式を直接分子系に対して解く方法は、数学的にも計算科学的にも煩雑で難しいと考えられてきたが、近年ではコンピュータの性能が上がりアルゴリズムも洗練され、実現可能な理論となった。しかしながら相対論的近似理論である1,2成分法に比べると、4成分理論の整備はまだまだ不十分であり、定量的な議論をできるのは限られた系に対してだけであった。特に非相対論レベルではその重要性が多く議論されてきた多配置的な静的電子相関の取り扱いについては、4成分理論のプログラム開発は遅れていた。そこで本研究者はcomplete active space second order perturbation theory(CASPT2)法という、非相対論レベルで高精度な電子相関効果を多配置的に取り入れることができる理論を、4成分相対論的分子理論に適用できるように拡張した。 CASPT2の非相対論レベルから4成分相対論レベルへの拡張にはいくつかの問題がある。一つはorbital baseからspinor base(orbital baseの2倍)で次元が増えるため計算コストが非常に大きいことである。またspinに関する対称性が無くなるのでこの点でも計算コストの増加が必須となる。また4成分理論では空間対称性にdouble group symmetryを用いる。この概念は1成分非相対論理論には存在しない。このような点を踏まえて理論を導入しなおし、極力効率的にプログラムを組み、分子系への定量的な議論を目指している。現段階ではプログラム化が終了し、小さな分子系に対しては計算し学会発表を行っている。より本格的な応用計算は今取り組んでいる最中で、論文執筆中である。
|
Research Products
(1 results)