2004 Fiscal Year Annual Research Report
魚類における体成長と性成熟の相互作用に関する分子生理学的研究
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03J11824
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
梶村 真吾 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | インスリン様成長因子 / インスリン様成長因結合タンパク質 / 成長ホルモン / 低酸素 |
Research Abstract |
魚類における体成長と性成熟の相互作用を解明する端緒として、今年度は1)成長ホルモンの卵巣に於ける作用機序の解明 2)IGF結合タンパク-1(IGFBP-1)の機能解析を行った。 1)成長ホルモン受容体(GH-R)の同定と卵巣内における発現変動の解析 成長ホルモン(GH)が卵巣に作用し、卵黄発達を促進する可能性が指摘されていたが、その作用機序は明らかではなかった。本研究では、ティラピアのGH-R遺伝子を単離し、哺乳類細胞を用いてGHに特異的な結合能を確認することで同定を行った。また、In situ hybridizationによりGH-Rがろ胞細胞に発現する事を明らかにした。さらに、卵巣におけるGH-RならびにIGF-Iの発現パターンは主な産生器官である肝臓とは異なるパターンを示し初期性成熟時に上昇することから卵巣におけるIGFシステムが初期性成熟に重要な役割を果たしていることが示唆された。本研究はJournal of Endocrinologyに発表された。 2)IGF結合タンパク-1(IGFBP-1)の機能解析 IGFBP-1はインスリン様成長因子(IGF)に結合し、IGFとIGF受容体との結合を調節する因子として知られている。IGFBP-1は低酸素下において急激に増加する事が報告されていたが、その機能は不明であった。本研究では、ゼブラフィッシュ胚を用いてその機能を解析した。まず、ゼブラフィッシュ初期胚を低酸素下(0.5mg/l 02)にて24時間飼育すると、発生ならびに成長の遅延が見られ、その際にIGFBP-1のmRNAおよびタンパク質が急激に増加した。次に、アンチセンスモルフォリノオリゴを用いてIGFBP-1をノックダウンすると、低酸素下における発生ならびに成長の遅延が改善された。さらに、IGFBP-1を過剰発現すると常酸素下(6-7mg/lに於いても発生ならびに成長の遅延が見られた。また、ゼブラフィッシュ胚由来の培養細胞系において、IGFBP-1は、IGF-1およびIGF-2による細胞増殖作用を阻害することが明らかとなった。以下の結果から、IGFBP-1は、IGFの細胞増殖機能阻害をすることによって、低酸素下において引き起こされる発生ならびに成長の遅延に関わる重要な因子であることが明らかとなった。本研究は、ミシガン大学分子細胞発生学科のC.Duan準教授との共同研究によりおこなわれた。また、Proceedings of Notional Academy of Scienceに発表され、Article from the coverとして採用された。
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Research Products
(5 results)