2003 Fiscal Year Annual Research Report
シオミズツボワムシの寿命制御機構に関する分子生物学的研究
Project/Area Number |
03J11825
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金子 元 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | シオミズツボワムシ / 寿命 / スーパーオキシドジスムターゼ / HSP70 / 定量的リアルタイムPCR / mRNA蓄積量 / 分子シャペロン / 酸化ストレス |
Research Abstract |
シオミズツボワムシ(以下ワムシと略記)は、環境条件に応じてその産仔数や寿命、ストレス耐性を大幅に変化させる。給餌を制限するとワムシの産仔数は減少するが、代わりに寿命および繁殖期間が長くなることが知られている。研究代表者らは、ワムシの寿命延長の分子機構を明らかにするため、寿命に関連すると考えられている遺伝子を数種類クローン化した。本年度は、それら遺伝子の発現様式を定量的リアルタイムPCRにより個体ごとに比較し、寿命への関与を調べた。 ワムシの寿命は、1日に1時間のみ餌を与えながら培養すると約2倍にまで延長する。このように培養したワムシを飢餓区とし一生を通じて給餌しながら培養した対照区のワムシとの間で、抗酸化酵素マンガン型スーパーオキシドジスムターゼ(Mn SOD)、銅・亜鉛型スーパーオキシドジスムターゼ(Cu/Zn SOD)およびHSP70遺伝子のmRNA蓄積量を比較した。これらの遺伝子は、いずれも寿命を延長させる機能を有しているため、寿命の長い飢餓区のワムシにおいて発現量が高くなることが予想された。 定量的リアルタイムPCRの結果、MnSOD遺伝子は若齢期のワムシで、またCu/Zn SOD遺伝子は老齢期のワムシでそれぞれ対照区より高い値を示した。それ以外の時期では、両試験区におけるSOD遺伝子のmRNA蓄積鼻はほぼ同じであった。これらの結果は、寿命研究の代表的なモデル生物である線虫Caenorhabditis elegansにおける知見と一致する。したがって、両遺伝子がワムシの寿命を延長させている可能性が考えられた。一方、HSP70のmRNA蓄積量は、寿命め長い飢餓区のワムシで一生を通じて低く、対照区のワムシでは一日あたりの平均産仔数の増減に伴って変化する傾向を示した。したがって、HSP70の発現量はワムシの寿命とは直接は関連しないと考えられた。すなわち、本分子は新生タンパク質のフォールディングを補助する分子シャペロンとしても働くため、ワムシの活発な繁殖に伴うタンパク質合成により誘導されているものと思われた。
|
Research Products
(4 results)
-
[Publications] Tatsuki Yoshinaga, Gen Kaneko, Shigeharu Kinoshita, Katsumi Tsukamoto, Shugo Watabe: "The molecular mechanisms of life history alterations in a rotifer : a novel approach in population dynamics"Comparative Biochemistry and Physiology. 136B. 715-722 (2003)
-
[Publications] Gen Kaneko, Tatsuki Yoshinaga, Yoshiko Yanagawa, Shigeharu Kinoshita, Katsumi Tsukamoto, Shugo Watabe: "Molecular characterization of Mn-superoxide dismutseand gene expression studies in dietary restricted Brachionus plicatilis rotifers"Hydrobiologia. in press. (2004)
-
[Publications] Tatsuki Yoshinaga, Gen Kaneko, Shigeharu Kinoshita, Satoshi Furukawa, Katsumi Tsukamoto, Shugo Watabe: "lnsulin-like growth factor signaling pathway involved in regulating longevity of rotifers"Hydrobiologia. in press. (2004)
-
[Publications] Tatsuki Yoshinaga, Yuki Minegishi, Inneke F.M.Rumengan, Gen Kaneko, Satoshi Furukawa, Yoshiko Yanagawa, Katsumi Tsukamoto, Shugo Watabe: "Molecular phylogeny of the rotifers with two Indonesian Brachionus Iineages"Marine Coastal Science. in press. (2004)