2005 Fiscal Year Annual Research Report
嘔吐の発現における自律神経系機能の役割に関する生理学的研究
Project/Area Number |
03J11847
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内野 雅浩 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 嘔吐 / 頚動脈洞神経 / 瞑想神経 / 動揺病 / グルタミン酸受容体 / 孤束核 / スンクス |
Research Abstract |
嘔吐の中枢メカニズムは、「嘔吐中枢」の存在を中心に考えられてきた。しかし、明確に定義される嘔吐中枢の存在は否定され、代わりに「延髄に散在する自律神経系反応に関与するコントロールシステムが協力して嘔吐反応を作り出す」という考えが提唱された。そして、それらを統合する「嘔吐pattern generator」が腹外側網様体(VLM)領域のBotzinger complex(疑核および後顔面神経核領域)に存在することが明らかになり、嘔吐の遠心性メカニズムが解明されつつある。その一方で、嘔吐の求心性メカニズムは未だ明らかにされていない。嘔吐は、消化管刺激、振動刺激および血中化学物質によって誘発される。これらの刺激は、異なる経路を介して延髄に入力されるにもかかわらず、同様の嘔吐を引き起こすことから、嘔吐刺激を統合する領域の存在が示唆される。本研究により、VLMが嘔吐の遠心性メカニズムの中心であるのに対し、孤束核(NTS)はその求心性メカニズムにおいて、消化管、前庭器官および圧・化学受容器からの情報統合に重要であると考えられた。頚動脈洞神経入力は、単独では催吐性がないが、NTSにおいて迷走および前庭神経入力と統合され、嘔吐発現を調節することが明らかになった。また、嘔吐発現はNTSで統合・加算された嘔吐刺激がVLMへ伝達されることによると考えられ、そのスタートであるNTS腹側および腹外側領域が「嘔吐反応のスイッチ」であることが示唆された。さらに、NTS腹側および腹外側ニューロンにおけるグルタミン酸受容体、特に□-amino-3-hydroxy-5-methylisoxazole-4-propionic acid(AMPA)受容体の発現が嘔吐反応に伴って増加したことから、AMPA受容体がNTSから嘔吐pattern generatorへの嘔吐シグナル伝達に関与することが示された。
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Research Products
(3 results)