2004 Fiscal Year Annual Research Report
海馬依存的運動学習における記憶保持回路の時間依存的再構成
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03J11869
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西内 可織 (竹原 可織) 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 長期記憶 / 海馬 / 前頭前野 / 小脳 / 神経科学 |
Research Abstract |
今までの研究において、私は脳部分破壊実験により、瞬目反射条件付けトレース課題の記憶保持を担う神経回路は学習後に海馬依存的神経回路から前頭前野依存的神経回路へと再構成されることを見出した。このことは最終的に記憶を貯蔵する神経ネットワークにおいて、前頭前野が重要な役割を果たす可能性を示唆している。さらに薬物局所投与実験により、この学習の獲得および初期の固定化に前頭前野のNMDA受容体が必要であることを示した。そこで今年度はこの前頭前野NMDA受容体に注目し、これが前頭前野依存的神経回路への再構成に関与するかどうかを浸透圧ポンプによる薬物局所慢性投与法を用いて検討した。その結果学習直後の2週間に前頭前野にNMDA受容体阻害薬を慢性局所投与すると前頭前野依存的に保持される学習成立6週間後の記憶の保持が障害を受けるが、その次の2週間に阻害薬を投与した場合は記憶の保持は影響を受けないことを見出した。このことは学習直後の2週間において前頭前野でNMDA受容体が活性化することが長期的記憶の形成に重要であることを示唆しており、脳部分破壊実験の結果とともに、前頭前野が最終的な記憶貯蔵を担う神経ネットワークにおいて重要な領域であるという私の仮説を支持する。この成果は日本神経科学学会年会、北米神経科学学会年会およびそのサテライトミーティングにおいて発表し、多くの研究者の興味を引き、高い評価を得た。現在論文投稿準備中である。さらに上述した記憶保持回路の再構成の神経活動レベルでの表現やその経時変化を調べるために、前頭前野からの多細胞同時神経活動記録を平行して行っている。現在までのところ、提示刺激に対して興奮性または抑制性の応答を示す神経細胞が存在することや学習が進むにつれて前頭前野の神経細胞群間の機能的結合性が上昇する傾向を見出した。これらの傾向は次年度の実験で精査する予定である。
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Research Products
(4 results)