2005 Fiscal Year Annual Research Report
海馬依存的運動学習における記憶保持回路の時間依存的再構成
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03J11869
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西内 可織 (竹原 可織) 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 長期記憶 / 海馬 / 前頭前野 / 小脳 / 神経科学 |
Research Abstract |
今までの研究において、私は脳部分破壊法、薬物局所単回投与法と薬物局所慢性投与法を用いた行動実験により、瞬目反射条件付けトレース課題において、前頭前野は記憶の獲得、初期の固定化、学習後に起きるシステム固定化、貯蔵そして想起の全ての記憶過程において必要であることを示した。そこで今年度は記憶の獲得中および以前獲得した記憶の想起中の前頭前野の神経活動を多細胞同時神経活動記録法により調べ、前頭前野が各記憶過程において具体的に何を符号化しているのかを調べた。その結果記憶の獲得中においても想起中においても、70%以上の前頭前野神経細胞が提示刺激に対して応答変化を示すことがわかった。一方、刺激をランダムに提示し、記憶を獲得できないようにした群では応答パターンが変化する細胞は20%以下しか観察されなかった。さらに各神経細胞の応答パターンを解析したところ、記憶の獲得中においては提示刺激や試行に対して持続的な抑制性応答を示す細胞が多くみられた。それに対して以前獲得した記憶の想起中には提示刺激や試行に対して一過的な興奮性応答を示す細胞が多くみられた。これらの結果は前頭前野は提示刺激間の連合を符号化していることを示唆する。さらに記憶の獲得時には前頭前野は記憶すべき試行の出現に対して持続的な抑制性応答を示すことで、海馬や小脳など記憶回路の他の構成要素が試行内容を符号化するのを修飾する働きをしているが、以前獲得した記憶の想起中では、提示刺激に対して一過的に反応し、小脳など行動出力を生み出す構成要素へ実行指令を送る働きをするようになると考えられる。以上の結果と一連の行動実験の成果から、私は瞬目反射条件付けトレース課題において、前頭前野は全記憶過程において記憶を担う神経回路の重要な構成要素であることが示し、短期記憶での重要性が強調されてきた前頭前野の新しい機能として長期記憶の形成制御と貯蔵の座を提示した。
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Research Products
(1 results)