2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J11933
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平林 祐介 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | beta-catenin / Wnt / neurogenesis / neocortex / neural precursor cell |
Research Abstract |
これまでにWntシグナルがニューロン分化を促進することを明らかにしてきたが、本年度はそのメカニズムの解明を行った。まず分化促進様式について、Wntがニューロン前駆細胞の選択的な増殖を促進しているのか、それとも神経系前駆細胞から誘導的にニューロンへと分化させているのかについて検討した。その結果、Wntシグナルは誘導的に神経系前駆細胞からニューロンへの分化を誘導していることを見いだした。次にWntシグナルによって発現が誘導される分子の同定を試みた。ニューロン分化を誘導する転写因子として、いくつかのbasic helix-loop-helix型転写因子が知られているが、なかでも本研究の対象である終脳背側部おけるニューロン分化にはneurogeninが重要であることが知られている。そこでneurongenin-1の転写を制御するプロモーター領域について調べたところ、Wntシグナルの下流で働く転写因子TCFの結合コンセンサス配列が含まれていることを見いだした。そこで、このプロモーター領域にluciferase遺伝子をつなぎ、レポーターアッセイを用い調べたところ、このTCF結合コンセンサス配列に変異を導入することでNeurogenin-1プロモーターの活性は大きく減少した。またChIPアッセイにより、神経系前駆細胞内でこのプロモーター領域にβ-cateninとTCFの複合体が結合していることがわかった。さらに、RT-PCRを用いて調べたところ、Wntシグナルを活性化することによってneurogenin-1のmRNA量が増加していた。以上の結果から、Wntシグナルは少なくとも一部にNeurogenin-1の発現を介して神経系前駆細胞のニューロン分化を誘導していることが明らかになった。
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