2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J11933
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平林 祐介 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Wnt / 大脳発生 / 神経系前駆細胞 / neurogenesis |
Research Abstract |
前年度までに、マウスの大脳皮質の発生において、Wntシグナルが神経系前駆細胞のニューロン分化を誘導的に促進し増殖を抑制すること、またこの効果はWntシグナルによるneurogenin-1の発現誘導を介すること見出した。一方で、他のいくつかのグループから我々が対象としていた時期より早期のマウス由来の神経系前駆細胞において、Wntシグナルが神経系前駆細胞の増殖を促進することが報告された。そこで、本年度はWntシグナルが発生の他の段階における神経系前駆細胞に対してどのような効果を持つかについて検討を行った。前年度までは胎生13.5日目付近の神経系前駆細胞を対象として研究を行っていた。そこでまず、より前期の、即ち胎生10.5日目の神経系前駆細胞に対するWntシグナルの効果を検討した。その結果胎生10.5日目由来神経系前駆細胞においてWntシグナルを活性化させたところ、BrdUを取り込む増殖中の細胞の割合が増加した。このことからこの時期の神経系前駆細胞に対してはWntシグナルが増殖を促進するという、胎生13.5日目付近の神経系前駆細胞に対するのと反対の効果を示すことがわかった。次に胎生13.5日目よりさらに遅い時期の神経系前駆細胞に対する効果を検討したところWntシグナルは増殖も、分化も誘導しなかった。以上の結果から神経系前駆細胞は、Wntシグナルに対して時期依存的に全く違う応答性を示すことが明らかになった。このことは神経系前駆細胞の運命制御において外部からの同じシグナルに対する神経系前駆細胞自体の応答性の時期依存的な違いが重要な要素となっていることを示唆している。
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