2005 Fiscal Year Annual Research Report
培養細胞の微小環境制御を目指した新しい微細加工技術の開発と応用
Project/Area Number |
03J11953
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森口 裕之 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 局所加熱 / 微細加工 / 集束レーザー光 / アガロースゲル / ゼラチンゲル / 膨潤 / 血管モデル |
Research Abstract |
先年度までの成果である、集束レーザー光を用いた局所加熱によるアガロースゲルの微細加工技術、アガロースゲルへの官能基修飾ナノパーティクル埋め込みによるプロテイン修飾技術を、1)基礎生物的応用、2)工学的応用、の双方向へ展開する研究を行った。 1)基礎生物学的応用では、アガロースゲル微細構造を生物体の形態形成プロセスに対する空間的境界条件として用いる新しい形態学実験手法の最初の一例として、種々の太さのアガロースマイクロトンネル構造内でのPC12細胞の神経突起伸展を約1週間にわたって追跡観察し、神経突起伸展に対する空間的拘束の影響を分析した。その結果、直線型のマイクロトンネル内での神経突起が伸長と縮退の振動を繰り返す様子が観察され、トンネルの直径が2μmから8μmの範囲内では、マイクロトンネルによる空間的拘束はその中で伸展するPC12の神経突起の運動速度を線形的に低下させる一方、伸縮振動の周期には有意の変化が見られない、という分析結果が得られた。 2)工学的応用では、培養液・血液循環型の大型バイオ人工臓器作成の基礎技術として、血管内皮細胞を用いた直径数十μmから数mmの血管モデル作成の技術開発を行った。その結果、直径数十μmから数mmのフィブロネクチン修飾アガロースゲルトンネル内に血管内皮細胞を搬入して培養することで、微細加工したトンネル内壁を血管内皮細胞で覆った血管組織様の細胞集団構造が形成された。次に、それまでの細胞支持構造であったナノスフィア包埋アガロースゲルのかわりに、コラゲナーゼなどの酵素処理で培養細胞に非侵襲に分解除去できるゼラチンゲルを支持構造に用いる血管モデル作成法の開発を行った。その結果、微細構造の局所加熱加工時には、ゼラチンとアガロースの混合ゲルを用いることで、加熱による体積変化の極めて小さいアガロースゲルのネットワークで加熱店近傍のゼラチンの膨潤を力学的に抑止して、ゼラチンゲルを安定に局所加熱加工する方法を見出した。加工後のゼラチン-アガロース混合ゲルは、ゼラチン部をグルタルアルデヒト架橋した後にアガロースゲル部を加熱融解除去する、という工程を経ることによって、酵素による分解除去が可能な架橋ゼラチンゲルの微細構造に変換された。この工程で作成し洗浄したゼラチンゲルマイクロトンネル内で血管内皮細胞を培養すると、細胞は内壁を埋め尽くすまでに伸長・増殖し、血管モデルが作成できた。 以上のうち1)の成果を第43回日本生物物理学会年会、第50回Biophysical Society年会で発表し、2)の成果を含めて一連の微細加工技術をInternational Symposium on Surface Science and Nanotechnology (ISSS-4)で発表した。
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Research Products
(1 results)