2003 Fiscal Year Annual Research Report
高脂血症治療薬フィブラートによるコレステロール逆転送系分子機構の解析
Project/Area Number |
03J50181
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 俊行 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | HDL / コレステロール逆転送系 / 動脈硬化 / SR-BI / CLAMP / フィブラート / PDZ |
Research Abstract |
HDLが動脈硬化発症頻度と負の相関にあるのは、末梢組織からHDLを介してコレステロールを肝臓へ輸送して、処理、排泄するという、生体内からコレステロールを排泄するコレステロール逆転送系が存在するためと言われているが、逆転送系においてSR-BIは肝臓でHDLからコレステロールを受け取る主要な受容体として注目されている。当研究室では、これまでに肝臓のSR-BIの細胞質ドメインに結合する蛋白質CLAMPを発見している。また、SR-BIの肝臓形質膜への発現がCLAMPの結合により安定化し、SR-BI蛋白質の発現レベルが上昇することが明らかになっている。SR-BIとCLAMPの発現制御を明らかにする目的で様々な薬剤を用いてこれらの蛋白質発現レベルを調べた結果、SR-BI及びCLAMPの発現が、高脂血症治療薬の一つであるPPARαアゴニストのフィブラート系薬剤により著しく低下することを見い出している。また、SR-BIの発現の安定化作用にはSR-BIと結合するCLAMPのN末端側PDZドメイン以外に、CLAMPのC末端側の領域が必要であること、C末端領域に存在する2つのセリン残基(509番目、512番目)が肝臓内でリン酸化されることを明らかにしている。今回、培養細胞を用いた検討から、これら2つのセリン残基をアラニンに置換すると、CLAMPによるSR-BI蛋白質の安定化作用が失われることが明らかになった。このことから、SR-BI蛋白質の安定化作用にはCLAMPのリン酸化が関与していることが示唆された(投稿準備中)。今後、CLAMPのリン酸化制御機構やCLAMPのリン酸化によるSR-BI蛋白質発現の制御機構などの解析を行い、HDL代謝の新たな分子機構を解明し、フィブラート系薬剤の作用機序、および医薬品開発の新たな標的を見つけていくことを目標としている。
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