2003 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ秒時間分解XAFS及び第一原理分子動力学法による触媒表面反応の機構解明
Project/Area Number |
03J50191
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
谷池 俊明 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 第一原理計算 / 密度汎関数法 / ガンマアルミナ / コバルト / 表面 / 吸着 / 反応機構 |
Research Abstract |
平成15年度は、2NO+CO→N_2O+CO_2反応に対して高い活性を持つCo/Al_2O_3触媒の新規触媒概念の理論的解明に取り組んだ。この反応は、表面近傍に検出されないスペクテイターCOの存在によってNO吸着量の増加及びジニトロジル間の角度の増大を伴って反応が進行するという非常に奇妙な機構を持ち、Surface Catalytic Reactions Assisted by Gas Phase Moleculesという新しい概念に属することが当研究室により提唱されてきた。我々は従来の分光法では解明できなかった反応機構の詳細を第一原理計算によって電子レベルから解明することを目的とする。 研究の手順としては、α-Al_2O_3のバルクモデルの計算によって高い精度が示された一連の理論的手法(密度汎関数法など)を用いて、γ-Al_2O_3のバルク・表面モデルを構築し、H_2O、Co、NO、COを順番に吸着させた上で各構造の電子状態の詳細を解析していく。 本年度の計算によってγ-Al_2O_3バルクはオクタヘドラル空孔が分散したdefectスピネル構造を取ること、γ-Al_2O_3(110)表面はAl_3O_4、または、Al_2O_4という組成を持つ表面を露出すること、(110)表面への水の解離吸着が配位不飽和性の高いテトラヘドラルAlとの反応を通して優先的に進行することが示された。これらの中間結果はγ-Al_2O_3の触媒・触媒担体としての汎用性やその構造の詳細が未解明であったことを考えれば非常に重要である。さらに我々は得られたγ-Al_2O_3(110)表面上におけるCoの吸着傾向を念入りに計算した。その結果、Coは2配位酸素・3配位酸素に直接結合し、さらにテトラヘドラルAlに吸着した孤立水酸基が弱く相互作用した2価3配位の吸着構造を取ることがわかった。この結果はUV・EXAFSの実験結果と非常に良く一致している。
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