2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J50201
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
熊澤 和久 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 有機化学 / 錯体化学 |
Research Abstract |
本研究では、巨大なπ共役系分子を特異的に認識するレセプターを、配位結合を利用した自己組織化によって効率的に構築する手法の開発およびレセプターの機能化を目指した。2年目は主にレセプターを用いた芳香族分子の有限集積と機能発現について調べたのでその研究の実績を以下に示す。 2枚のパネル状有機多座配位子の間に、π-π相互作用を利用してπ共役系分子を集積可能なレセプターの構築を行った。実際、2枚のパネル状三座配位子間の距離を棒状の2座配位子(ピラー)の長さによって制御し、このパネルとピラーを遷移金属錯体によりつなぎとめることで配位結合性のレセプターを構築した。このレセプターを用いることで、芳香族分子をレセプターの内部空間にピラーの長さに応じて決まった数だけ取り込むことを可能にした。この手法により、パネル配位子と合計して、芳香族分子3から7分子の有限集積を達成した。これらのレセプターの構造はNMR、X線結晶構造解析、質量分析などの各種分析手法により決定した。 次に、アクセプター性のレセプター内部にドナー性の芳香族分子を2分子集積したところ、2分子間の相互作用により、レセプターとの間の電荷移動吸収帯が1分子の場合に比べて長波長シフトする挙動が観測された。この知見をもとに、ダイマー状態の芳香族分子に由来する特異的な物性の観測を行った。具体的には、2分子のテトラチアフルバレン(TTF)をレセプターの内部に集積させ、その水溶液について2分子のTTFのうち1分子のみを電気化学的に酸化した。その結果、TTF2分子間で正電荷が非局在化したことを示す混合原子価状態に由来する吸収を近赤外領域に観測することに成功した。この挙動は、分子修飾を行っていないTTFにおいて溶液中では初めての観測例である。
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Research Products
(3 results)