2003 Fiscal Year Annual Research Report
単一分子デバイスの作製とテラヘルツ電磁波を用いたその伝導ダイナミクスの解明
Project/Area Number |
03J50221
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
梅野 顕憲 東京大学, 生産技術研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 単一分子素子 / 伝導ダイナミクス / テラヘルツ電磁界 / シャトル機構 / 微小電極対 / ブレークジャンクション / 電気メッキ / 汎用消毒液 |
Research Abstract |
1998年頃から、電極間隔1nmという極微小構造を作製する研究例が報告されるようになっている。この領域は、フラーレンやベンゼンといった有機分子ひとつの寸法と同じであり、事実、単一の分子を介したものと思われる電気伝導特性が報告されている。このような構造は単一分子素子と呼ばれている。 単一分子素子に関する従来の研究では、素子の直流領域での測定結果と理論とを比較し、伝導機構を推定するという間接的な議論しかなされていなかった。本研究は、新たにテラヘルツ電磁界を用いて単一分子素子の電気伝導を評価し、理論に対する明確な判定実験を行うことでその伝導機構を明らかにしようとするものである。 研究の1年目は素子作製の技術習得および改良が目的であった。成果としては、素子作製の要となる間隔1nm以下の極微小電極対を作製する手法を2つ確立することに成功した。 ひとつは従来から用いられている手法であり、金属細線に大電流を流して断線させ、その断線部分を電極対として用いるものである。研究代表者らは、本手法を習得するのみならず、断線過程を詳細に調べることで作製手法の再現性を高めることを狙った。その結果、非対称傾斜蒸着法という新しい手法によって、大電流による断線が細線の特定の場所で生じるような構造を作製し、電極対作製の再現性を向上させることに成功した。本成果は、学術論文に投稿準備中である。 もうひとつは、電気メッキによって電極間隔を原子スケールで可逆に制御する手法である。研究代表者らは汎用の消毒液を用いてこのような原子スケールの金電極作製を行うことに成功した。これは、従来猛毒のシアン系の薬品を用いざるを得なかった本手法の実験コストを大幅に低減するものであり、研究効率の向上に寄与した。本成果に関しては国内外の2つの学会において採択され、発表済みであるとともに、学術論文に投稿準備中でもある。
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