2003 Fiscal Year Annual Research Report
ジャック・デリダの思想における討議倫理の帰趨:「来たるべき民主主義」のプログラム
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03J50231
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮崎 裕助 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | デリダ / ハーバーマス / 討議倫理学 / 脱構築 / 行為遂行的矛盾 / 判断力 / 崇高 / カント |
Research Abstract |
本研究の15年度の研究実績は大きく二つに分かれる。第一は、研究者のこれまでの(カントの『判断力批判』に基づく政治的の判断力の研究)を踏まえ、本研究が効果的に着手され展開するような諸前提を確定する作業。第二には、本研究の最も基礎的な枠組みとなる討議倫理の概念、それに対するデリダの批判、およびその再活性化がどのようなものになったのかの解明である。 1.まず二つの論文「判断の崇高」および「物質的崇高について」(「11.研究発表」参照)では、デリダの『法の力』が言語的規約・社会的規則の拘束力について提起した「決定のアポリア」の問いを、カントのいう反省的判断力の概念に即して考察した場合、『判断力批判』の問題設定はいかに解釈しうるのかを検討した。その結果、判断力の内在的な困難が「崇高」と呼びうる契機であることが論証されるとともに、共通感官を基礎にした判断力論(アーレントやハーバーマスの間主観的な倫理概念)にとって批判的かつ政治的な帰結をもたらすことが確認された。 2.次に「行為遂行的矛盾をめぐる不和-デリダと討議倫理学の問題」において、現代ドイツの哲学者ハーバーマスとアーペルによって提唱された討議倫理学の概念が、デリダの著作においてどのように批判・検討され、再び練り上げられうるのかを考察した。その結果明らかになったのは次の三点である。(1)ハーバーマス流の討議倫理学は、その基礎づけの立証を行うために、討議の所与性を反事実的な想定として理想化していること。(2)デリダが言語行為論との論争において証示したのは、そのような理想化がまさに理想化不可能な他者の排除によって構造的に依存しているということである。(3)こうしたデリダの議論は、脱構築の倫理的立場(「ミニマルな倫理」)を示唆しているが、それが行為遂行的矛盾の概念の再解釈に基づいていたという点である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 宮崎 祐助: "判断の崇高-カント『判断力批判』と美学の崩壊"哲学・科学史論叢(東京大学教養学部哲学・科学史部会). 6. 201-226 (2004)
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[Publications] 宮崎 祐助: "物質的崇高について"表象文化論研究(東京大学総合文化研究科表象文化論). 3. 2-17 (2004)
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[Publications] 宮崎 祐助: "行為遂行的矛盾をめぐる不和-デリダと討議倫理学の問題"フランス哲学・思想研究(日仏哲学会). 9(印刷中). (2004)