2004 Fiscal Year Annual Research Report
ジャック・デリダの思想における討議倫理の帰趨:「来たるべき民主主義」のプログラム
Project/Area Number |
03J50231
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮崎 裕助 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | デリダ / ハーバーマス / 討論倫理学 / コミュニケーション / テレコミュニケーション / コンセンサス |
Research Abstract |
本研究の16年度の研究実績は、日本哲学会の学会誌用に寄稿された研究「ミニマル・コンセンサスの条件--デリダにおけるテレコミュニケーションの論理」に集約される。 フランスの哲学者デリダは、既存のコミュニケーション論の批判者としてしばしば現れる。にもかかわらず、デリダが「コミュニケーション」という語に対して距離をとってきたという事実に、従来充分な注意が払われてこなかったように思われる。 本研究の要点は、以下の観点からデリダのコミュニケーション論批判を検討し練り直してみることである。(1)デリダの議論が「テレコミュニケーション」と呼ばれうるようなものの必然性の発見に立脚していること。(2)またこの議論が、コミュニケーションの理想化する諸想定(民主主義が依拠している一義性、透明性、公共性などの理念)を経験主義的な観点(コミュニケーションの日常的現実の多様性にこだわる観点)から異議を申し立てるような論難ではなく、コミュニケーションを理想化可能にする論理そのものから生じてくる内在的批判だということ。(3)こうした議論は、コミュニケーションが厳密な意味で一つの出来事として生じることにとっての前提条件をなしており、そこから出発してこそ「ミニマル・コンセンサス」が追求可能になるということ。 結果、デリダのコミュニケーション論批判が、恣意的な意思伝達の容認や社会的な合意形成の放棄に向かうのではなく、まさしくコミュニケーション一般にとって最小限の(ミニマル)コンセンサスが可能となる必須条件を提示していたこと、そしてこのことが意思伝達や合意形成の構成要素としての「遠隔性」への洞察に導かれていたということを、本研究は明確に引き出すことができた。これをデリダの「遠隔(テレ)コミュニケーション論」として取り出したことが本研究の功績である。
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Research Products
(3 results)