2003 Fiscal Year Annual Research Report
植民地統治下の南アジアにおける公教育の形成と在地語媒体
Project/Area Number |
03J50281
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
足立 享祐 東京外国語大学, 大学院・地域文化研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | 近代史 / インド:イギリス / オリエンタリズム / マラーティー語 / 植民地教育 |
Research Abstract |
本研究課題では、植民地期における在地語媒体の配置を歴史学的に分析する。調査対象は1820-70年代のイギリス東インド会社領ボンベイ管区マラーティー語圏とし、1.イギリスによる東洋諸語研究を軸としたインド社会認識の形成、並びに2.現地社会内での在地語出版物や教育活動といった諸媒体による再生産の過程、の連関を一次資料に基づき詳らかにすることで、植民地的言説空間における受容/解釈/伝達の重層性の実証を目標とする。 平成15年度特別研究員採用期間(平成15年9月〜同16年3月)の研究結果は下記の通りである。 ・研究基礎資料の作成:東インド会社監督局通達書に見られる東洋諸語項目一覧の作成、およびマラーティー語に関わる言語編成について関連法の資料集化が終了した。これらは非西欧社会に対するイギリスの言語・文化的な情報収集を概観するための基礎資料となるものである。 ・東インド会社とインド諸語教育:社員養成記録(Haileybury College Records)及び監督局記録(Board's Collection)の調査により、イギリス本国でのヒンドゥスターニー語教育から現地派遣後のマラーティー語習得にいたる階梯が明らかになった。これらはイギリスにおける植民地的インド像の形成において、植民地官僚と現地人エリートとの間の在地語による折衝空間の可能性を示唆するものである。 ・マラーティー語への植民地的作用:ボンベイ管区行政議事録(Bombay Proceedings)および英国図書館所蔵マラーティー語文献の調査により、ネイティブ教育における教授言語をめぐる議論の中で展開された在地語空間の階層化とその(反)作用としてのマラーティー語の標準化と美化へ動きが明らかとなった。この点については、本年度奨励費にてマイクロフィルム化したマラーティー語雑誌の分析、並びにインドでの現地調査を平成16年度中に実施する予定である。
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