2004 Fiscal Year Annual Research Report
低温バッファ層ナノ結晶制御によるIII族窒化物半導体高品質結晶成長
Project/Area Number |
03J50291
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
村上 尚 国立大学法人東京農工大学, 大学院・工学教育部, 特別研究員(DC2)
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Keywords | GaNナノ結晶 / 低温GaNバッファ層 / 鉄ドーピング / 半絶縁性GaN基板 / キャリア補償 |
Research Abstract |
GaN系材料を用いた光デバイスは、低温バッファ層技術、選択横方向成長を用いた転位低減技術の開発により実現がなされているが、GaN系電子デバイスの開発に関しては、未だ実用化に至っていない。GaNは高い絶縁破壊電界、飽和ドリフト速度、熱伝導率をもつことから、テラヘルツ級の高周波化が可能となると考えられている。しかし、現在実用化されているGaN基板の転位密度が大きい、寄生容量や誘電損失を防ぐための半絶縁性GaN基板が無いこと等が実用化の弊害となっている。本研究では、高抵抗GaN厚膜を得るため、成長と同時にp型ドーパントであるフェロセン((C_5H_5)_2Fe:Cp_2Fe)を気相で供給し、FeCl_2としてGaN中に鉄をドーピングしキャリアの補償を行った。今回は、GaNの比抵抗、キャリア密度、キャリア移動度と各原料供給比との相関について明らかにした。 ノンドープのGaNにおいては、比抵抗が2.7x10^<-3>Ω・cmのn型伝導を示したが、Feドーピング濃度の増加に伴い比抵抗が増加した。フェロセンの供給分圧比(P_<Cp_2Fe>/P_<GaCl)が6.83x10^<-1>のときに3.0x10^9Ω・cmとノンドープと比較して12桁大きい比抵抗を持つGaNが得られ、GaN厚膜の半絶縁性化に成功した。二次イオン質量分析により結晶膜中の不純物濃度を測定したところ、ノンドープのGaN中には2x10^<19>cm^<-3>の酸素が存在し、本成長装置により成長したGaNの主な残留ドナーは酸素であることが明らかとなった。また、Feドーピングを行うことにより、Fe不純物濃度がOの不純物濃度を超えたときに高抵抗化していることがわかり、キャリアの補償が確認された。結晶品質に関しては、c軸配向性はFe濃度の増加に伴って徐々に劣化するが、結晶中の欠陥密度は減少することがわかった。これは、FeドーピングによるGaN表面における横方向成長の促進によるものと考えられる。
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