カシナガ成虫の分布と移動に関する要因の解明とナラ枯れの被害拡大予測モデルの構築

2003 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 03J50391
• Research Institution: Kanazawa University
• Principal Investigator: 井下田 寛 金沢大学, 大学院・自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
• Keywords: カシノナガキクイムシ / 空間分布 / ギャップ / 積算日射量 / 走光性 / 移動 / 風 / 風況予測モデル

Research Abstract

1999年から継続して調査を行っている調査区に0.5m四方の粘着板を設置してカシナガの捕獲成虫数を調査した。粘着板で捕獲された飛翔成虫の空間分布を調べると、林道に沿った林縁部に成虫密度の高い場所が生じた。2000年をピークにして、捕獲個体数は減少傾向にある。
ギャップを横切るように横長の粘着トラップを設置し、捕獲数と積算日射量の関係を調べた。その結果、林縁部の相対日射量が0.2付近で捕獲数が最大となった。これらの結果は、ギャップ内部では日射量と捕獲数との間に負の関係,樹冠下では逆に正の関係が認めらたことを示唆している。この走光性の逆転が、飛翔成虫が林縁で密度がもっとも高くなる直接的な原因と考えられた。
風向トラップは回転バンド(粘着バンドと風見鶏を連結したもの)と固定バンドからなる。回転バンドでは風上側で、固定バンドでは北西側で多くの個体が捕獲された。これらの結果は、風下に移動した飛翔成虫が多いことと、午前中の太陽の方向である南東方向に移動した個体が多いことを示している。2つのバンドの結果を比較すると、回転バンドでは方向性は明確ではなかった。この結果は、この場所では風よりも光の方が移動により強く影響していたことを示している。
風をシミュレートするランドスケープレベルのモデルの構築を開始するために、LAWEPS(局所風況予測モデル)を立ち上げ、計算を開始した。
Geostatisticsを利用した解析のために、USDA Forest ServiceとUniversity of West Verginiaのgeostatistics研究室を訪問するとともに、USDA Interagency Research Forum on Gypsy Moth and Other Invasive Speciesで研究成果を発表した。

Research Products

• [Publications] Yutaka Igeta: "Influence of light condition on the stand-level distribution and movement of the ambrosia beetle Platypus quercivorus (Coleoptera : Platypodidae)"Applied Entomology and Zoology. 38・2. 167-175 (2003)
• [Publications] 井下田寛: "林分内の光環境がカシノナガキクイムシの空間分布に及ぼす影響"第52回日本林学会中部支部大会研究発表講演要旨集. 52. 19-19 (2004)
• [Publications] Yutaka Igeta: "Influence of light condition on the spatial distribution of an ambrosia beetle Platypus quercivorus (Murayama) (Coleoptera : Platypodidae) flying in a natural secondary broad leafed forest"Proceedings, U.S.Department of Agriculture interagency research Forum on gypsy moth and other invasive species. (in press).
• [Publications] 井下田寛: "林分内の光環境がカシノナガキクイムシの空間分布に及ぼす影響"中部森林研究. 52. 107-108 (2004)
• [Publications] 井下田寛: "林分内におけるナラ枯れとカシノナガキクイムシ個体群の時間的空間的動態XI 風と斜面がカシノナガキクイムシの移動に及ぼす相対的な影響"第115回日本林学会大会研究発表講演要旨集. (印刷中).