2004 Fiscal Year Annual Research Report
英語の小節内に現れる前置詞・不変化詞の統語的位置と小節構造の分析
Project/Area Number |
03J50481
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
横越 梓 名古屋大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 小節構造 / 文法化 |
Research Abstract |
英語の小節内に現れる前置詞に関して、通時的な観点から分析した。特に現代英語でも小節内に現れるforについて、以前は機能範疇として振舞っていたのが文法化を経て現代では前置詞としてのみ機能するということを主張し、その根拠を歴史的な変化を辿ることで提示した。また意味論的な観点からも支持証拠を挙げた。 現代英語において小節内に現れる要素で最も多いのはasであるが、この語が小節内に現れ始めたのは中英語期からである。それ以前はforが多く用いられていた。これら2つの要素が文法化を受け、forは初めは機能範疇であったのが前置詞、すなわち語彙範疇へと変化し、一方asは初めは語彙範疇としての機能しか持たなかったのが次第に機能範疇として働くようになったと考えられる。この根拠としては、asとforが選択できる後続要素の種類やitやthereなどの虚辞の分布などが挙げられる。通常文法化は語彙範疇から機能範疇への変化を指すと考えられるが、逆向きの文法化が存在するという主張もみられることから、asとforの辿った変化は文法化の一種であろう。そしてこの文法化が起こった時期がほぼ同時期であることから、両要素が相互に影響し合ったということがわかる。 現代英語において小節内に現れるforが機能範疇ではなく語彙範疇であるという証拠は意味論的な観点からも支持できる。forを用いた文ではasを用いた文に比べ、客観性が落ちることが観察される。従属節の間における意味の違いに関して、that節、ECM構文、小節のように構造が小さくなる順に客観性が低くなるという分析にしたがえば、asを用いた文とforを用いた文でforの方において客観性がより低くなるという事実は、forの場合には機能範疇を欠いており、構造が小さくなるためであると結論付けられるのである。したがって現代英語において小節内に現れるforは機能範疇ではなく前置詞、すなわち語彙範疇であるということになる。
|