2004 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子置換ノックインマウスを用いた、視覚機能多様性に関する研究
Project/Area Number |
03J50531
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
桜井 啓輔 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 視細胞 / 視物質 / ノックインマウス / 網膜電位図 / 光情報伝達 / 単一視細胞記録 / 錐体 / 桿体 |
Research Abstract |
薄明視と昼間視を司る桿体と錐体視細胞では、それぞれに含まれる視物質の分子特性が異なることが知られている。光情報伝達過程においてこれらの諸性質が果たす役割を検証するため、申請者が作製した2系統の錐体視物質ノックインマウス(桿体視物質をマウス緑・ニワトリ緑錐体視物質に置換)の表現型解析を行なった。 網膜電位図(ERG)を記録し、視細胞に由来するa波を指標として、桿体視細胞の光感度を解析した結果、視物質の置換により、光感度の低下(野生型に対しマウス緑は1/25、ニワトリ緑は1/8)がおこっていることが分かった。一方、発現視物質量を分光学的に測定すると、野生型のロドプシンに対してマウス緑は1/10であったが、ニワトリ緑が1/5であることが分かった。これらの結果、視物質の性質の違いにより光感度の低下が引き起こされることが示唆された。さらに,吸引電極を用いてノックインマウスの単一視細胞記録を記録し、光感度や応答速度を細胞レベルで調べた。桿体視物質をマウス緑錐体視物質に置換したマウスと野生型での視細胞応答を比較した結果、ノックインマウスは野生型に比べて33倍の感度低下が起こっていることがわかった。この結果はERGで測定された結果と対応しているため、確かに視細胞レベルで感度の低下が起こっていることが判明した。これと並行して錐体視物質ノックインマウスの桿体視細胞外節を調製し、錐体視物質の生体膜中での性質を分光学的に測定した。その結果、生体膜中においても錐体視物質の分子特性(中間体の挙動)が、ロドプシンと大きく異なり、活性中間体の寿命が数百倍短いことが分かった。
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