2003 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子置換ノックインマウスを用いた、視覚機能多様性に関する研究
Project/Area Number |
03J50531
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
桜井 啓輔 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 視細胞 / 桿体 / 錐体 / 光情報伝達 / ノックインマウス / 網膜電位図 / 視物質 |
Research Abstract |
薄明視と昼間視を司る桿体と錐体視では、それぞれに含まれる視物質の分子特性が異なることが知られている。生体内においてこれらの諸性質が果たす役割を検証するため、申請者が作製した視物質置換ノックインマウスの表現型解析を行なった。 ノックインにより桿体視物質をマウス緑及びニワトリ緑錐体視物質に遺伝子置換したマウスを2系統作製し、その解析を行った。表現型解析として、まず、置換された遺伝子の転写量や翻訳量をRT-PCR法や分光学的手法により測定した。その結果、導入した錐体視物質の転写量(発現量)は、それぞれ野生型に比べ60%(10%)、60%(10%)であった。更に、免疫組織化学法により、発現蛋白質の細胞内の局在を解析した結果、錐体視物質が桿体視細胞外節に輸送されることが分かった。 また、視物質等の光情報伝達に関わる遺伝子改変は、網膜の形態に多大な影響を与える可能性が高いことが知られている。そこで、各遺伝子型における網膜組織の形態の観察を行ったところ、錐体視物質を発現する視細胞は加齢に従って変性を起こすことが分かった。 また、網膜電位図(ElectroRetinoGram)を記録し、視細胞に由来するa波を指標として、視細胞の光感度を解析した。その結果、桿体視物質から錐体視物質へ置換されたことにより、光情報伝達効率と光感度の低下がおこっていることが分かった。これらの結果、遺伝子置換した視物質は光受容蛋白質として機能し、桿体と錐体の視細胞の特性の一部は、視物質の性質の違いにより引き起こされることが示唆された。
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