2004 Fiscal Year Annual Research Report
同性同年輩間における鏡映関係について-心理臨床学的観点からの研究-
Project/Area Number |
03J50591
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
須藤 春佳 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 同性同年輩関係 / 青年期 / 鏡映関係 / chumship / 同一性 / 性差 |
Research Abstract |
本研究は、思春期、青年期における身近な同性同年輩関係が、そこに自らを映し見やすい「鏡映関係」にあるという観点から、この関係に生じる様々な感情を検討し重層的側面に着目することで、その心理学的意味を明らかにすることを目的とするものである。 今年度は、中学、高校、大学時代における同性同年輩関係と、大学時における自己形成、同一性との関連について調査した質問紙調査のうち、前年度に続き、全体的な傾向分析を行った上で、より個別的な特徴の分析(クラスター分析)を行った。全体的傾向の結果については、2005年1月に行われた、京都大学国際シンポジウム(New Perspectives in Affective Science)でポスター発表を行った。得られた知見は以下の通りである。男子は、同性同年輩間での共感的、鏡映的な感情体験をした人ほど、周囲とのつながりを志向する態度を持つ傾向を示し、一方同性同年輩間での、自他の違いの認識が、(周囲から自分を分離したものとして感じる)分離性自己を持つ傾向を示した。一方女子では、同性同年輩間での共感的な感情体験が周囲とのつながりを志向する態度と関連を示したが、疎外される感情や、鏡映的な感情体験が、分離性自己の形成を妨げる傾向がみられた。このことから、同性同年輩関係は、女子の方がつながったものとして感じられているのでないかと考えられ、同性同年輩間での感情体験と自己形成との関連は、男女で違いがあることがわかった。 また、クラスター分析に基づいた個別的特徴の分析結果を受けて考察したものは、投稿論文にまとめられた。ここでは、質問紙尺度データと合わせて、投影法(主題統覚検査:TAT)データの分析を行い、「同一性」(Erikson,1953)の在り方との関連を検討した。結果より、身近な同性との間で、共感的で、一体感を伴った、思いやり、助け合うような、chumship(親友関係)の体験が優位な群とそうでない群との間に、同一性の在り方において違いがみられた。また、chumshipの体験が優位だった群、および優位でなかった群それぞれにおいて、男女それぞれの質的な違いが見られ、同性同士の関係性は性差が顕著であることが示された。 一方、今年度は上記の調査研究に合わせて、筆者の心理臨床実践活動の中から、思春期女子の事例を取り上げ、本研究課題に関連する事例研究論文を執筆した(印刷準備中)。
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Research Products
(1 results)