2003 Fiscal Year Annual Research Report
同性同年輩間における鏡映関係について-心理臨床学的観点からの研究-
Project/Area Number |
03J50591
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
須藤 春佳 京都大学, 大学院・教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 同性同年輩関係 / 青年期 / 鏡映関係 / chumship(親友) / 自我同一性 / 性差 / 身体性 |
Research Abstract |
本研究は、青年期における身近な同性同年輩関係が、そこに自らを映し見やすい「鏡映関係」にあるという観点から、この関係に生じる様々な感情を検討し重層的側面に着目することで、その心理学的意味を明らかにすることを目的とするものである。 今年度は、中学、高校、大学時代における同性同年輩関係と、大学時における自我同一性との関連について調査した質問紙調査のうち、全体的傾向を探る分析を行った。得られた知見として、主に以下の2点が挙げられる。(1)同性同年輩関係の様相を測定した「同性関係イメージ尺度」と自我同一性の状態を測定した「アイデンティティ尺度」との関係分析結果より、身近な同性同年輩との関係には、心理的な安定化をもたらす側面と、逆に疎外感を抱かせる側面の両者がある(身近な同性との間で共感的で安心感を伴う体験や、同性に対して違いを感じる体験をしたと答えた人は、自分に対する不確かな感覚は低かった。また、身近な同性との間で満たされなさや羨望の感情を感じてきた人は、自分に対する不確かな感覚が高かった)。(2)「同性関係イメージ尺度」の因子得点値の男女における差より、同性との心理的距離は男子より女子の方が近い(男子は女子に比べて同性との間で違いを感じる傾向にあり、女子は男子よりも同性との間で一体感や連帯感を感じる、鏡映的な体験をするという傾向があった)。両尺度間の関連の出方に男女で違いがみられたことからも、同性同士の関係は、男女でその性質に違いがある。(質問紙調査から得た全体的傾向の結果については、2003年12月に米国ミシガン大学にて行われた、京都大学国際シンポジウムでポスター発表を行った。) また、上の調査に引き続き、同性同年輩関係について、より具体的事例の特徴を捉えるため、約20名を対象に個別面接調査を行っている(2004年2月〜3月)。データのまとめは続行中であるが、これによって数量的検討では捉え切れなかった同性同年輩関係の様相が、個別事例に即した形で描きだされた。
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