2003 Fiscal Year Annual Research Report
西アフリカ・サバンナ帯における地域植生の動態に関する総合的研究
Project/Area Number |
03J50601
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平井 將公 京都大学, 大学院・アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 西アフリカ・サバンナ帯 / 地域固有の人為植生(地域植生) / セネガル中西部 / セレール / アカシア・アルビダAcacia albida / 在来的生業システムとその変容 / 砂漠化 / 生態資源の持続的利用 |
Research Abstract |
本研究は、西アフリカ・サバンナ帯に成立する地域固有の人為植生(以下、地域植生とする)とそれを構築してきた地域住民との相互関係について、近年の生業変容を踏まえながら通時的に明らかにすることを目的としている。本年度は、セネガル中西部・セレール社会において地域植生の変化の実態とそれに関連する諸要因の具体的影響に関して現地調査を実施した。 セレールの人びとは、過去数世紀の間、アカシア・アルビダ(以下、アルビダ)からなる地域植生を「しつけ」とよばれる方法を用いて耕地のなかに維持してきた。ところが、1970年代以降、「しつけ」の実践は徐々にみられなくなり、それまで一定量に保たれていたアルビダの個体数は、現在、推定0.1〜0.2本/ヘクタール/年という速度で、遅いながらも着実に減少しつつあることが明らかになった。このままの現状が続くと、植生の存続は困難になると推察される。 このことの背景には、天候不順、人口増加、トウジンビエ栽培やウシ牧畜への依存度の低下、出稼ぎの急増、馬耕の普及や休閑地の消滅、土地保有制や労働力の細分化といった、「しつけ」の実践にかかわる多数の要因が関与していた。「しつけ」は本来トウジンビエ栽培やウシ牧畜の安定化を図るために実施されてきたが、生業をめぐるこれらの要因の変化は「しつけ」の実践を物理的に困難にし、かつ、その動機をも希薄させる方向に作用していると示唆された。 従来、セレールの社会では、トウジンビエ-ウシ-アルビダの三者関係を基盤とした生業が綿密な社会組織のもとで展開されていた。その意味は経済的なものに留まらず、社会形成や子どもの教育と大きく関連していたことも示唆された。今後は、この三者関係が人びとの生活にどのような意味をもっていたものなのか、そして変容後、それがどのように変化していくのかについて村、世帯、個人レベルで分析していくことが課題となる。
|