2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J50681
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
蓮田 隆志 大阪大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 近世 / アジア海域世界 / 近世帝国 / 華人 |
Research Abstract |
今年度得られた知見と成果は、今年度行った3本の学会発表に集約される。 1 7月にホーチミン市で開催された第2回ベトナム学国際会議「ベトナム:発展・開発と統合への道」にて「中興黎朝の成立再考」と題する報告をベトナム語で行った。16世紀に成立した後期黎朝の成立主体を見直すもので、内外史料の対照によって、通説の阮淦単独政権説を清華出身武人勢力の連合政権と再規定した。会場では批判も含めて大きな反響を得ることができた。 2 10月たアジア民衆史研究会にて「「華人の時代」と近世北部ベトナム:1778年の越境事件を素材として」と題する報告を行った。近年主に海域東南アジア史を中心に華人勢力の再評価が進んでいるが、陸の世界における華人の地位を実証的に考察することを目指したものである。これによって18世紀後半の北部ベトナムにおいて、華人のベトナム人から明瞭に区別される形態で広く存在しており、その判別基準は言語と服装であることが実証された。 3 12月には台湾で開催された国際アジア歴史学者会議にて"Seeing Mainland Southeast Asian Experiences from the Early Modern Empire Perspective" (Panel_3-6: Critical Dialogues between Maritime Asian Studies and the World-System Theory: The "Early-Modern Empire")と題する報告を行った。東南アジア史の近年の動向を整理し、その上で最新の世界システム研究との接点を探ったものである。世界システム論のアジア理解が未だ不十分なことを指摘した上で、システム論的な観点から広域史を見直す可能性が理論的に十分あり得ることを示し、ベトナムの事例紹介と併せて両者のさらなる対話の必要性を主張した。英語での初の学会発表という点で個人的にも大いに収穫があったが、日本のアジア近世史研究の最新動向を網羅的に紹介したことで、欧米のアジア研究者から好評を得ることもできた。 以上、今年度の研究活動においては、世界システム論のような超広域の議論からベトナム政治史というミクロなレベルに到るまで実証的成果を積み上げると共に、いずれの分野においても今後の研究の可能性と必要性が大いに存在することを明らかにすることができたと言えよう。
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Research Products
(1 results)