Research Abstract |
本研究では,全天球動画像を利用者に提示し,仮想空間内で屋外環境を移動出来るテレプレゼンスシステムの構築技術の開発を目的とする.臨場感の高い仮想化現実空間を構築するために解決が必要な課題として,前年度までに「1.提示画像の視野・画質」,「2.インターフェースの直感性」の問題に取り組み,カメラシステムのキャリブレーション法及び,歩行装置と没入型ディスプレイを用いた画像提示システムを開発した. 本年度取り組んだ「3.視点移動と提示画像の整合性」の問題に対しては,システム利用者の歩行動作による視点移動を考慮した提示画像の高品質化手法を開発した.従来のテレプレゼンスシステムでは,ゲームコントローラなどを介し視点の移動量を指定し,遠隔地で乗り物に乗る感覚を提示する.このため撮影時のカメラの揺れや振動による画像のぶれは,乗り物の振動による視界の揺れを再現するものであり,臨場感を高める要素としてそのまま使用されていた.これに対して,歩行運動による視点移動では,画像のぶれは歩行による視界の変化と一致せず逆に臨場感を損ねる要素になる.また,撮影時のカメラの移動量と画像提示時の歩行による移動量の不一致も,同様に臨場感を損ねる要素である. 本年度は,カメラの位置・姿勢推定手法を用い,(1)撮影時の画像のぶれの補正と(2)提示画像の移動量補正を同時に実現し,提示画像の高品質化を図った.カメラの位置・姿勢推定では,全カメラの画像上で自然特徴点の追跡により,広範囲に高精度なカメラ位置・姿勢推定が可能な手法を採用する.推定されたカメラ位置・姿勢情報のうち,(1)提示画像のぶれ補正では,カメラ姿勢情報を用い画像の回転を除去する.(2)提示画像の移動量補正では,カメラの位置情報を用い,画像提示時に歩行による移動量に一致するように描画する.今後,試作機を用いた実験により,臨場感が向上を確認する予定である.
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