Research Abstract |
食餌タンパク質の質的影響による尿素生合成の調節機構について明らかにするため,体タンパク質合成,肝臓アミノ酸分解酵素活性,肝臓アセチルグルタミン酸分解に着目し,検討した。タンパク質源として小麦グルテン,カゼイン,全卵タンパク質を用いた。 肝臓,腎臓,骨格筋,小腸のタンパク質合成速度,タンパク質合成量は,全卵タンパク質,カゼイン,グルテンの順で,栄養価の低下に伴い低下していた。グルテン食摂取により,肝臓のセリン,アラニンなど非必須アミノ酸濃度が有意に高くなることが知られており,低栄養価タンパク質食摂取により,体タンパク質合成が低下し,肝遊離アミノ酸濃度が増加することが,尿素生合成のの調節因子の1つであると考えられた。 肝臓Serine dehydratase,GOT,GPT,等アミノ酸代謝酵素活性は,3群とも有意な差はなく,タンパク質の栄養価の影響を受けなかった。Tyrosine aminotransferaseは,グルテン摂取群において,他の2群に比較し,有意に増加したが,Tyrosine aminotransferaseは,チロシンの分解酵素であり,そのチロシンの肝臓における濃度は,セリン,アラニンなど他の非必須アミノ酸に比べ低値であることを考えると,アミノ酸分解酵素活性が尿素生合成を調節している可能性はかなり低いと考えられた。 グルテン食摂取により,肝アセチルグルタミン酸の濃度が有意に増加し,逆にアセチルグルタミン酸の分解速度が有意に低下していることが示された。 以上の結果から,低栄養価タンパク質食摂取により,肝臓体タンパク質合成が低下し,肝臓アミノ酸濃度が増加したこと,肝臓アセチルグルタミン酸分解を抑制し,その濃度を増加させたことが,食餌タンパク質の質的影響による尿素生合成の調節因子の1つであると示唆された
|