2004 Fiscal Year Annual Research Report
共鳴ラマン分光法による無傷ミトコンドリア中のチトクロム酸化酵素の反応追跡
Project/Area Number |
03J50881
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
高橋 俊成 兵庫県立大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ミトコンドリア / チトクロム酸化酵素 / 共鳴ラマン分光 / 生体エネルギー変換 |
Research Abstract |
ミトコンドリア用に改良した酵素反応追跡用人工心肺装置を用い、ミトコンドリア中のチトクロム酸化酵素(CcO)とO_2との反応を時間分解共鳴ラマン分光法により追跡した。酸素化型、パーフェリル型、フェリル型の反応中間体について、可溶化酵素に対応するバンドを観測した。すなわち、ミトコンドリアにおいて571cm^<-1>に現れるバンドが^<18>O_2により544cm^<-1>に同位体シフトを示すことから酸素化型反応中間体のFe-O_2伸縮振動に帰属した。次に観測される804,785cm^<-1>付近のバンドも^<18>O_2により、764,750cm^<-1>に低波数シフトを起こしたことから、パーフェリル型およびフェリル型のFe=O伸縮振動に帰属した。 これらの反応中間体の振動数すなわち配位構造は可溶化CcOと比較して、大きな違いは見られなかった。しかし、酸素化型反応中間体は、バンドの強度は0.4,0.6,1.4msの順に減衰していくものの、1.4msにおいても観測された。一方、可溶化CcOにおいてはこの時間領域では酸素化型反応中間体は観測されない。このことから、ミトコンドリア膜中においては、反応中間体の寿命が長いことが示唆された。また、ミトコンドリアにおいてヒドロキシル型を検出すべく3msまでの領域まで測定したが、観測されなかった。よって、これ以降の時間領域で生成していると考えられる。したがって、ヒドロキシル型の出現が可溶化酵素に比べて遅いことがはっきりした。また、高波数領域においては、反応開始後約0.5msにおいて、ヘム骨格のν_4モードに由来するバンドが1371cm^<-1>から1377cm^<-1>に高波数シフトを起こした。これは、中間体のうち酸素化型の生成によると考えられるが、これは可溶化酵素における以前の結果と矛盾しない。 これらの結果より、これまで単離したCcOにおいて議論されてきた反応中間体が、実際のミトコンドリア中でも確かに存在することが明らかとなった。したがって、生理的条件における酸素活性化反応の理解が深まった。
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Research Products
(1 results)