2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J50941
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
鎌倉 利光 慶應義塾大学, 社会学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 自尊感情 / 遺伝的要因 / 環境的要因 / 双生児法 / 行動遺伝学 / 縦断方法 / 気質 / パーソナリティ |
Research Abstract |
自尊感情に影響を与える遺伝構造・環境構造について、双生児を対象にした質問紙調査を行い、行動遺伝学的手法を用いて検討してきた。まず、約1年の間隔における縦断研究の結果から、自尊感情の一貫性を規定する要因として、環境的要因だけでなく、遺伝的要因も寄与していることを示した。また、自尊感情が時系列的に変化する規定因としては、遺伝的要因よりも環境的要因が主に影響していることを示した。次に、自尊感情に影響する遺伝的要因と環境的要因を規定する表現型として、気質とパーソナリティをとりあげて、これらの表現型が自尊感情に対してどのように影響しているのかについて同様の手法を用いて検討した。その結果、気質の中でも損害回避という特性が自尊感情に影響する遺伝的要因に対して、強く影響していることが示された。また、パーソナリティにおいては、特にビッグファイブと呼ばれる5つの特性がそれぞれ自尊感情に影響する遺伝的要因と環境的要因に影響していることを示した。これらの知見から、自尊感情に影響する遺伝的要因の多くは、損害回避とビッグファイブといったパーソナリティ特性からの影響であると解釈される。自己・自尊感情の発達の主たる学術的な問題の1つとして、自尊感情の時系列的な安定性と変動が挙げられるが、以上の研究の結果から、自尊感情には一貫性を生み出す遺伝的要因が、その発達に対して中程度に影響しており、また、その遺伝的要因とは遺伝子等を含めた生物学的な基盤ではなく、気質やパーソナリティといった構成概念に影響する遺伝的要因が基盤になっているのではないかと考えられる。
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