Research Abstract |
本年度の研究の成果は,下記のとおりである.また,現在,下記の内容に関する雑誌論文を投稿中である. ランダムオラクルと現実の関数との性質の違いに関連する関係(Gap-relation)を定義した.Gap-relationは,その性質の違いを見つける探索問題と考えることができ,2つの性質を満たさなければならない.まず,ランダムオラクルモデルにおいて,その探索問題が困難であること.次に,現実世界において,その探索問題が,平均的に簡単であること,である.特徴は,探索問題の問題例を生成するアルゴリズムを導入したことにある.そのアルゴリズムを用いて,上記の性質は,ランダムオラクルモデルで,探索問題が困難となるような問題例生成アルゴリズムが存在するが,現実世界では,そのアルゴリズムをシミュレートするシミュレーターが存在する,となる. さらに,この提案は,Goldwasser-Taumann等の方式を構成するために利用できることから,ランダムオラクルモデルで安全だが,現実世界で安全でない具体的方式を構成するために必要な条件の,より一般的な形式化であると言える. 最後に,この提案は,ランダムオラクルと現実の関数の性質に差がある場合に,探索問題の困難性に差が生じることを意味しているが,もし,その差がない場合,その探索問題は,現実世界でも困難である.そのような関数として,Canetti等が提案したOracle Hashing方式がある.この方式を用いて,Goldwasser-Taumann等の方式を構成した場合,現実世界でも安全であることを示すことができる. したがって,本研究で提案するGap-relationは,安全でない性質を生起するだけでなく,安全な構成を導くための形式化であることから,公開鍵暗号の安全性への信頼性を高めるという意味で有用であるといえる。
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