2003 Fiscal Year Annual Research Report
日本バレエ史研究-エリアナ・パヴロバによるバレエ移植の手法
Project/Area Number |
03J51051
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
川島 京子 早稲田大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | エリアナ・パヴロバ / 日本バレエ / バレエ移植 |
Research Abstract |
本年度は、エリアナ・パヴロバが日本で展開したパヴロバ・バレエスクールの成立過程、学校制度、指導法、作品から彼女による日本へのバレエ移植(=弟子輩出)の手法を考祭した。結果から、次の点が挙げられる。 1.家元制度に形式だけでも同化(入門後3年目の「自作自演」を以って卒業、独立を許可、奨励するという卒業制度。卒業後も「賛助出演」をし、師弟のラインを残す。家事全般を受け持つ内弟子制度。) 2.ダンサー、教師、振付家のすべてを兼任できる形に育て生徒の独立を奨励(卒業認定が「自作自演」であると同時に、バレエスクール創立後の初演作品はすべてエリアナ及び弟子達の創作である。) 3.曲目仕上げの方法で、最低限の正統的な技術を修得させつつも舞台経験を最優先(現存する昭和元年頃の稽古フィルムから、稽古の正統性は確認できるが、弟子達の入門から初舞台までの期間が短く、作品を仕上げながら、技法を身につけてゆく曲目仕上げであったといえる。上演作品の調査結果からは、彼女がテクニックを売りとするのでなく、あくまでもバレエは感情表現であるという姿勢を貫いたといえる。) 以上のことから、パヴロバ・バレエスクールは日本人にとって受け入れられやすいシステムであり、しかも一舞踊家として即活躍できる状態に育て上げたといえる。しかし、これは、エリアナの亡命者としての余裕のなさ、また、エリアナが日本に亡命し、バレエスクールを設立、本格的に起動に乗るといったどの転機も日本で得た支援者達のマネージメントに支えられていることから、多くの支援者を得ることにより、日本伝統芸能の特殊性に抵抗なく同化していったことに起因するといえる。つまり、亡命者としての不遇が、本人の意図とは無関係に、結果的にバレエ移植を成し遂げたといえる。
|
Research Products
(2 results)