2005 Fiscal Year Annual Research Report
後漢式鏡における地方様式の成立・展開と図像的変遷の研究
Project/Area Number |
03J51061
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
楢山 満照 早稲田大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 後漢式鏡 / 四川 / 石闕 / 図像学 / デジタルデータベース |
Research Abstract |
本研究は、後漢式鏡における地方様式の成立過程とその展開の解明を目的とするものである。本年度は、これまでに執筆し学術雑誌に発表した研究成果の内容をさらに深め、それを学会や研究発表の場で公表し、他の研究者とともに、後漢式鏡における地域様式と図像的展開についての見解を、体系的に論じることをテーマとした。 まず、2005年5月に、早稲田大学COEアジア地域文化エンハンシング研究センター主催の第2回四川研究会において、「四川地域漢代美術における銅鏡の資料的価値」という題目で研究発表を行った。その発表の場で、文献史学の観点からアプローチをこころみる他の研究者などと学術的意見の交換を行い、四川地域漢代美術の地域性を論じるうえで、他資料の収集と、その公開・共有の重要性を再確認した。 そこで、6月〜8月まで、中国・四川大学芸術学院の協力のもと、四川省における漢代銅鏡と漢代石刻資料(とくに石闕)の図像学的調査を行った。銅鏡については銘文をもつ資料約30点、石闕については、現存する計18ヶ所の実物資料を調査した。そして、後漢時代の当地における「歴史故事・説話」の展開と独自の受容方法を、可視的に看取することのできる図像を確認した。 その調査報告と研究成果の発表を目的として、2006年3月に、平成17年度早稲田大学美術史学会第2回例会の場で「四川漢代石闕の図像と造営事情」という題目で研究発表を行った。 本年度は、銅鏡における地域様式の展開について今後さらに検討していくうえでの関連資料として、四川地域に現存する石闕の図像に焦点をあて、現地での実地調査とその報告に重点をおいた。 その結果、当地における歴史故事の独自な受容方法とその図像的表現方法、という視座を得ることができた。この視点は、他地域の後漢式鏡の図像を読み解く上でも欠かせないものであるが、それが漢代美術の理解において、普遍的に有効な手段であるのか、今後、さらに検討していく必要があろう。
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